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zoom RSS 【論壇時評】  7条解散の恣意が問題 改憲議論は具体的に 中島岳志  東京新聞2017年4月25日

<<   作成日時 : 2017/05/13 07:27   >>

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【論壇時評】
7条解散の恣意が問題 改憲議論は具体的に 中島岳志
東京新聞2017年4月25日

http://www.tokyo-np.co.jp/article/culture/rondan/CK2017042502000251.html

 「憲法改正に賛成か反対か」を漠然と問う世論調査に、違和感がある。何条のどの部分をどのように変えるべきかという具体的内容が伴わない問いには、答えようがない。結局この問いは、改憲/護憲という二分法を、右派/左派のアイデンティティー闘争の道具にしてしまっている。憲法改正の賛否が、イデオロギー的立場の表明に直結する言論構造を、そろそろ乗り越えなければならない。

 ケネス・盛(もり)・マッケルウェインは「日本国憲法の特異な構造が改憲を必要としてこなかった」(『中央公論』5月号)の中で、日本国憲法の短さを指摘する。国会、内閣、司法など「統治機構」に関する記述は特に少なく、これまで制度改正は法改正ですませ、改憲にまで手を付けてこなかった。「一度も憲法を改正しなくて済んだ理由の一つは、その短さにあるといえるだろう」

 マッケルウェインが危惧するのは、短すぎるが故に生じる立憲主義の空洞化だ。現行憲法では、権力者による恣意(しい)的な制度運営が可能となってしまう。だから、統治機構について踏み込んで規定することで、権力を抑制することが望ましいと訴える。その通りだろう。

◆まず法律で対応

 木村草太は「憲法改正 自公維民4党の論点」(『文芸春秋』5月号)において、イデオロギー的改憲論を牽制(けんせい)しつつ、「改憲が必要かどうかは、これまでに生じている問題を分析した上で、法律の運用の適正化でも、法律改正でも対応できない、となってはじめて議論されるべきものだ」と主張する。具体的に検討に値する論点として「参議院の合区解消」「衆議院解散権の制限」「幼児教育から高等教育までの無償化」の三点を提示し、自民・公明・維新・民進のキーマンにインタビューを行っている。

 ここで重要なのは民進党で憲法調査会長をつとめる枝野幸男の回答だ。枝野は、「最初の国民投票は絶対に成功させなければいけない」と言い、しかもそれは「『大差』で可決されなければならない」と述べる。もし否決されると憲法論議はタブー化し、僅差では国民が分断されるからだ。だから、改正案は社民や共産の賛成が得られることが望ましいと言う。

 その上で、枝野が検討すべきだと論じるのが、「衆議院解散権の制限」である。憲法六九条では不信任決議が通った際に解散が認められている。これは先進国の中でも標準的な内容だが、日本には憲法七条を根拠とするもう一つの解散の方法が存在する。内閣の助言と承認があれば、天皇の国事行為として解散ができるとされ、首相がいつでも独自に解散を断行できると解釈されている。

 先進国では解散権は制約されており、日本が例外的な存在になっている。私たちが普通だと思っている解散総選挙は、世界の中ではかなり特殊なあり方なのだ。

 なぜ先進国は解散権を制約するのか。

 首相は解散をほのめかすことで、与党内の求心力を高め、野党を牽制する。結果、解散が政局に利用され、じっくりと政策に取り組むことができなくなる。サプライズ解散は、首相の「断固たる意志」や「強いリーダーシップ」を誇示する表現形態となってしまう。イギリスでは二〇一一年に議会期固定法が成立し、総選挙は五年ごとに行うことが定められた。内閣不信任案の可決に伴う解散以外では、議会下院の三分の二以上の賛成がなければ解散は行われない。

 枝野は「六九条解散はいいが、七条解散は認められるべきではない」とし、「『解散権の制限』こそ、憲法典を変えないとできない」と論じる。同じ民進党の細野豪志も「現実的な憲法改正案を提示する」(『中央公論』5月号)の中で同様の提案を行っている。細野は参議院の通常選挙とのダブル選挙を狙った衆議院解散を問題視する。もし、両議院のダブル選挙中に緊急事態が生じれば、国会の機能が麻痺(まひ)しかねない。緊急事態を口実とする行政権の恣意的行使を十分にチェックできなくなる恐れがある。

◆節度欠く現政権

 民進党は足並みの乱ればかりが注目されがちだが、「解散権の制限」については合意形成が可能だろう。だとすれば、民進党は共闘を目指す共産党などに対し、積極的に改憲案を提示すべきである。

 ただ、この「解散権の制限」に関して、与党の腰は重い。木村草太がインタビューを行った自民党の中谷元(党憲法改正推進本部長代理)は、「政権の節度」にゆだねるべきであると主張し、七条解散の改正に反対する。しかし、今まさに政治問題になっているのは現政権の節度の欠如である。恣意的な閣議決定や解釈改憲を進める現政権に対しては、やはり立憲主義的な歯止めが必要である。

 改憲問題をイデオロギー化するのは、もうやめるべきだ。

 (なかじま・たけし=東京工業大教授)


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