東電は英BPか米エンロンか?・・・原油流出事故の後にBP株を買った人は、今、70%の利益を!
リーマンをちっぽけに見せる東京電力の存在 本当に大きすぎて潰せない会社
2011.04.15(Fri) Financial Times
(2011年4月14日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
東京電力は米リーマン・ブラザーズを10倍にしたような存在だ。本当に大きすぎて潰せないのである。
同社は日本の電力の29%を、首都圏の200万社超の企業と2600万世帯に供給している。今、福島第一原子力発電所が恒久的な運転停止になっただけでなく、東電が抱える17基の原子炉のうち13基が停止中で、20ある石油火力発電所の半分と2つの石炭火力発電所も運転を停止している。
東電の失われた発電量(通常の発電量の4分の1程度)は、厳しい暑さで電力需要が急増する夏場の前でさえ、既に深刻な影響を及ぼしている。
運転を停止しているのは福島第一原子力発電所(写真)だけではない〔AFPBB News〕
政府は1974年の石油危機以来使われたことのない法令を発動し、今夏の電力使用量を昨年のレベルの4分の3に制限すると見られている。
大企業のロビー団体である日本経団連は、強制的な使用制限は幅広い産業にダメージを与えると懸念している。
鉄道、紙パルプ、鉄鋼、化学、ビール会社、半導体メーカー、自動車および自動車部品メーカーはすべて、電力に大きく依存している。経団連は必死になって、自主的な削減を認めるよう政府を説得しようとしている。
東電なしで機能し得ない日本経済
要するに、地震と津波は日本の国内総生産(GDP)のごく一部にしか影響しないという話は、楽観的に見える。もし電力制限が今年いっぱい、あるいはそれ以上続いたら、日本経済の心臓部が生命維持装置につながれることになる。
近代の日本は絶対に、東電なしでは機能できない。まさにそれが問題で、どんな国でも経済の血液である大手銀行のように、東電は必要不可欠なのだ。
もし先月の災害に対する同社の計画と対応に過失があったとすれば(あったことを示唆する証拠は十分ある)、主な原因は、大きすぎて潰せない公益企業という東電の地位にある。モラルハザード(倫理の欠如)は銀行業だけに限らない。
見事な安定供給の裏でモラルハザードに
東電はこれまで首都圏に電力を安定供給してきた〔AFPBB News〕
東電は顧客にとっては悪い会社ではないということは認めるべきだろう。確かに、日本の電気料金は高い。だが、東電は実に見事に安定した電力供給を維持してきた。
1世帯当たりの停電時間は、年間4分という並外れた低さに抑えられている。テンプル大学現代アジア研究所のエネルギー専門家、ポール・スカリーズ氏によれば、これに対してフランスでは45分、米国では69分、英国では73分に上るという。
しかし、東電は舞台裏でモラルハザードに陥っていた。同社には隠蔽と杜撰な安全基準という偽りの歴史がある。2002年には、原子炉の亀裂に関係した安全性データを日常的に改竄していたことが発覚した。今では、東電が福島原発の予備発電機を地下に置いていたことが分かっている。後に全く不十分だったことが判明した防潮堤よりも低い場所だった。
また、同社は数十億円の価値がある資産の廃棄を避けるために、海水による原子炉冷却を遅らせたとの見方もある(会社側は否定している)。
東電の実績に対する1つの説明は、公務員が、かつて自身が規制していた業界で割のいい仕事に就く天下り制度だ。原子力産業を規制する経済産業省で資源エネルギー庁長官を務めた石田徹氏は今年、東電顧問に就任した。
規制する側とされる側の近すぎる関係
先月、福島原発から放射性物質が漏れ始めた後に一時姿を消した東電の清水正孝社長は経団連の副会長で、これは同社の強大な影響力を示す証拠だ。
規制当局と業界の間を行き来する人の数は、それほど多くないかもしれない。だが、規制する側とされる側の関係は近すぎる。構造的に見ると、これは原子力の規制機関が、外国石油への依存からの脱却を図る方法として原子力エネルギーの利用促進を仕事と見なす経産省の一部だからだ。
より根本的には、東電と政府は同じ側にいる。日本国民は第1次石油危機以降、広島と長崎の経験から生まれた原子力嫌いを克服した。
しかし、スリーマイル島とチェルノブイリの原発事故は、国民の支持を大きく鈍らせた。これに対して、規制当局と原子力産業の双方がリスクを控えめに扱うようになった。東電が取ってきたような弛緩した態度を助長するために設計されたような状況である。
銀行と同じように東電も、もし何か大きな問題が生じたら、政府が支援してくれると考えた。同社は既に、自然災害で生じた損害について会社を免責する法律を好意的に解釈してくれるよう、猛烈に働きかけている。
そうした寛大な支援がなければ、東電は絶望的なように思える。同社の負債比率は300%に迫る水準で、業界平均の3倍に達している。
株主にとって東電は英BPとなるか米エンロンとなるか?
東電が電気料金を大幅に値上げできない限り(国民は値上げを支持しないだろう)、どうやったら、古い原子炉の廃棄や新しい原子炉の建設、差し当たっての代替エネルギー源の確保にかかる費用を払えるだけのキャッシュフローを稼げるのか分からない。それも、今後必ず起きるだろう、農家や不満を抱くユーザーからの訴訟を考慮する前の話だ。
株主の観点からすると、東電は英BPか米エンロンかどちらかの道をたどるだろう。昨年のメキシコ湾岸での原油流出事故の後にBP株を買った人は、今、70%の利益を手にしている。エンロンはもちろん、破産し、株主を道連れにした。
東電がエンロンと同じ道をたどることを許されない限り、日本の原子力産業は、民間の利益と社会の損失の例として、欧米銀行業界の仲間入りをすることになる。
By David Pilling© The Financial Times Limited 2011. All Rights Reserved. Please do not cut andpaste FT articles and redistribute by email or post to the web.
2011.04.15(Fri) Financial Times
(2011年4月14日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
東京電力は米リーマン・ブラザーズを10倍にしたような存在だ。本当に大きすぎて潰せないのである。
同社は日本の電力の29%を、首都圏の200万社超の企業と2600万世帯に供給している。今、福島第一原子力発電所が恒久的な運転停止になっただけでなく、東電が抱える17基の原子炉のうち13基が停止中で、20ある石油火力発電所の半分と2つの石炭火力発電所も運転を停止している。
東電の失われた発電量(通常の発電量の4分の1程度)は、厳しい暑さで電力需要が急増する夏場の前でさえ、既に深刻な影響を及ぼしている。
運転を停止しているのは福島第一原子力発電所(写真)だけではない〔AFPBB News〕
政府は1974年の石油危機以来使われたことのない法令を発動し、今夏の電力使用量を昨年のレベルの4分の3に制限すると見られている。
大企業のロビー団体である日本経団連は、強制的な使用制限は幅広い産業にダメージを与えると懸念している。
鉄道、紙パルプ、鉄鋼、化学、ビール会社、半導体メーカー、自動車および自動車部品メーカーはすべて、電力に大きく依存している。経団連は必死になって、自主的な削減を認めるよう政府を説得しようとしている。
東電なしで機能し得ない日本経済
要するに、地震と津波は日本の国内総生産(GDP)のごく一部にしか影響しないという話は、楽観的に見える。もし電力制限が今年いっぱい、あるいはそれ以上続いたら、日本経済の心臓部が生命維持装置につながれることになる。
近代の日本は絶対に、東電なしでは機能できない。まさにそれが問題で、どんな国でも経済の血液である大手銀行のように、東電は必要不可欠なのだ。
もし先月の災害に対する同社の計画と対応に過失があったとすれば(あったことを示唆する証拠は十分ある)、主な原因は、大きすぎて潰せない公益企業という東電の地位にある。モラルハザード(倫理の欠如)は銀行業だけに限らない。
見事な安定供給の裏でモラルハザードに
東電はこれまで首都圏に電力を安定供給してきた〔AFPBB News〕
東電は顧客にとっては悪い会社ではないということは認めるべきだろう。確かに、日本の電気料金は高い。だが、東電は実に見事に安定した電力供給を維持してきた。
1世帯当たりの停電時間は、年間4分という並外れた低さに抑えられている。テンプル大学現代アジア研究所のエネルギー専門家、ポール・スカリーズ氏によれば、これに対してフランスでは45分、米国では69分、英国では73分に上るという。
しかし、東電は舞台裏でモラルハザードに陥っていた。同社には隠蔽と杜撰な安全基準という偽りの歴史がある。2002年には、原子炉の亀裂に関係した安全性データを日常的に改竄していたことが発覚した。今では、東電が福島原発の予備発電機を地下に置いていたことが分かっている。後に全く不十分だったことが判明した防潮堤よりも低い場所だった。
また、同社は数十億円の価値がある資産の廃棄を避けるために、海水による原子炉冷却を遅らせたとの見方もある(会社側は否定している)。
東電の実績に対する1つの説明は、公務員が、かつて自身が規制していた業界で割のいい仕事に就く天下り制度だ。原子力産業を規制する経済産業省で資源エネルギー庁長官を務めた石田徹氏は今年、東電顧問に就任した。
規制する側とされる側の近すぎる関係
先月、福島原発から放射性物質が漏れ始めた後に一時姿を消した東電の清水正孝社長は経団連の副会長で、これは同社の強大な影響力を示す証拠だ。
規制当局と業界の間を行き来する人の数は、それほど多くないかもしれない。だが、規制する側とされる側の関係は近すぎる。構造的に見ると、これは原子力の規制機関が、外国石油への依存からの脱却を図る方法として原子力エネルギーの利用促進を仕事と見なす経産省の一部だからだ。
より根本的には、東電と政府は同じ側にいる。日本国民は第1次石油危機以降、広島と長崎の経験から生まれた原子力嫌いを克服した。
しかし、スリーマイル島とチェルノブイリの原発事故は、国民の支持を大きく鈍らせた。これに対して、規制当局と原子力産業の双方がリスクを控えめに扱うようになった。東電が取ってきたような弛緩した態度を助長するために設計されたような状況である。
銀行と同じように東電も、もし何か大きな問題が生じたら、政府が支援してくれると考えた。同社は既に、自然災害で生じた損害について会社を免責する法律を好意的に解釈してくれるよう、猛烈に働きかけている。
そうした寛大な支援がなければ、東電は絶望的なように思える。同社の負債比率は300%に迫る水準で、業界平均の3倍に達している。
株主にとって東電は英BPとなるか米エンロンとなるか?
東電が電気料金を大幅に値上げできない限り(国民は値上げを支持しないだろう)、どうやったら、古い原子炉の廃棄や新しい原子炉の建設、差し当たっての代替エネルギー源の確保にかかる費用を払えるだけのキャッシュフローを稼げるのか分からない。それも、今後必ず起きるだろう、農家や不満を抱くユーザーからの訴訟を考慮する前の話だ。
株主の観点からすると、東電は英BPか米エンロンかどちらかの道をたどるだろう。昨年のメキシコ湾岸での原油流出事故の後にBP株を買った人は、今、70%の利益を手にしている。エンロンはもちろん、破産し、株主を道連れにした。
東電がエンロンと同じ道をたどることを許されない限り、日本の原子力産業は、民間の利益と社会の損失の例として、欧米銀行業界の仲間入りをすることになる。
By David Pilling© The Financial Times Limited 2011. All Rights Reserved. Please do not cut andpaste FT articles and redistribute by email or post to the web.


この記事へのコメント