新聞の「政争の具にするな」は政治闘争から身を引きたいだけ

新聞の「政争の具にするな」は政治闘争から身を引きたいだけ
NEWSポストセブン2012.04.20 16:01


 新聞ではしばしば「政争の具にするな」というフレーズが使われる。自らも新聞界に身を置く東京新聞・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏は、このフレーズを安易に使うことに警鐘を鳴らす。

 * * *
 新聞が政治の現状を嘆くとき、お決まりのフレーズに「政争の具にするな」という言い方がある。最近では、産経新聞が4月8日付社説で「政争の具にせぬルールを」と題して、国会が日銀審議委員の人事案について不同意にした問題をとりあげた。

「政争の具にするな」というフレーズは、たとえば年金改革や選挙制度改革のような重要案件をめぐっても、しばしば使われる。しかし、いったい政治闘争の焦点にならないような重要案件があるのだろうか。

 重要であればあるほど既得権益との戦いは激烈になる。年金で言えば、若者の現役世代と引退した高齢世代では、生涯の受益に無視できないほどの大きな格差が存在している。選挙制度でも比例代表をどれだけ認めるかによって小政党と大政党で大きな差がつく。それを改めようとすれば、激しい政争になるのは必然である。

 東京新聞もときに使ってきたから、えらそうに言えないが、新聞が「政争の具にするな」と叫ぶのは、激しい政治闘争から一歩、身を引いていたい気分もにじんでいる。私自身はずばり賛否を明らかにしたほうが読者に分かりやすいと思う。

 日銀人事で言えば、これまでの金融政策をどう評価するかが判断の軸になる。私は否定的だ。だから「国会の否決は妥当」と考える。

参考
【主張】
日銀同意人事 政争の具にせぬルールを
産経新聞2012.4.8 03:10 [主張]





 日銀政策委員会審議委員の人事案が参院で否決された。政府が提案した候補が財政再建派で一段の金融緩和に慎重とされ、「デフレ脱却にはなお金融緩和が必要」とする自民、公明などが反発したのだ。民主党の消費増税反対勢力からも同様の声があがった。

 日銀法は総裁、副総裁、審議委員について「両議院の同意を得て、内閣が任命する」と定めており、政策委員会に欠員が生じることになった。定員6人の審議委員には学者、経済人、エコノミストなどが就いてきた。欠員が出ると多様な意見が交わされないし、意に沿わぬ人は審議委員にしないとなると、異なる立場の意見を封じてしまいかねない。

 法で定める以上、否決が認められないとはいえない。しかし、その際、国会が考慮すべき問題はある。とりわけ重要なのは「中央銀行の独立性」だ。

 先進国の中央銀行は、程度の差こそあれ、政府からの独立を標榜(ひょうぼう)する。自国通貨の価値を守る「通貨の番人」として政治の思惑とは別に経済状況を分析する。政府と逆の決断が必要な局面もある。

 このため、政府のいいなりとみられると市場はもちろん、国際的信用を失い、国益をも損なう。

 当然だが、「独立性」と「政府との協調」は矛盾しない。日銀が政府と緊密に意見を交換し、景気認識をすりあわせることは重要だ。国会同意人事も日銀を意のままに動かすためではなく、独立性の担保が目的だったはずだ。

今回の参院否決にこうした考慮はあったか。消費増税法案審議を控え、恣意的な判断が加わったとすれば、責められるべきだ。

 4年前、参院で過半数を制していた野党・民主党は自公政権が示した日銀総裁・副総裁人事案を相次いで否決、総裁は約3週間不在となった。衆参ねじれを武器にした民主党が文字通りの政争の具とし、異常な混乱に陥った。

 来年は日銀総裁の交代期だ。早急に同意人事に関する公正なルールを作る必要がある。国会提示前の事前調整や、参院で否決された場合は衆院の議決、再議決を優先させることを検討してもよい。

 ただ、いくらルールを作っても国会がその背景にある「日銀の独立性維持」を尊重しなければ意味はない。再び政争の具になり、日銀の、ひいては日本の信用失墜という結果を招きかねない。

※週刊ポスト2012年4月27日号



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