ステージ4 がんと生きる 池田省三 <告知>「やっぱり…」眠れた夜

【暮らし】
ステージ4 がんと生きる 池田省三 <告知>「やっぱり…」眠れた夜
東京新聞2012年4月21日


 自覚症状はあった。排せつがうまくできない。一昨年九月ごろだった。以前、痔(じ)の手術をしたことがあり、「取り残した痔の影響では」と思っていた。翌十月に病院で診てもらったら、「精密検査をしましょう」。ただ、その予約は二カ月以上も先だった。

 医療に詳しい友人と一杯やっている時だった。私には、大腸がんで早世した友人がいるが、「彼の症状と似ているような気がする」と話した。すると、「それはまずくないか」と、別の病院に連絡してくれて、十一月一日に緊急に検査。CT(コンピューター断層撮影装置)で調べると、大腸がんが発覚した。肺や肝臓への遠隔転移も見つかり「ステージ4」と告げられた。ステージ5はない。それは「死」。即座に入院、手術となった。

 がんの告知はショックではなかった。むしろ、「がんじゃないか」とモヤモヤしていたが、それがはっきりしたことで「やっぱり」と妙に納得。その夜、とてもよく眠れたことを覚えている。

 がんの最大の問題は、進行の速度だ。自覚症状は急激に悪化していたので、最初の病院で精検までの二カ月以上を待っていたら、本当に手遅れだったかもしれない。別の病院で診てもらえたことは幸運。患部の問題で、人工肛門を付けずに済んだこともうれしかった。

 ただ、手術後の診断は「合併症が出れば、三カ月の命。抗がん剤が効かなければ半年。効いても一年」。担当医から直接は聞かなかったが、後に家族からそう聞いた。

 人間の致死率は100%。死そのものは、不当でも不幸でもないと納得していたが、介護保険をライフワークとしている者として、残したいものがたくさんあった。そこで、研究生活の集大成を一冊の本にまとめることにした。何せ時間がない。病院のベッドの上で執筆を開始。校正も同時進行だった。

 私が死ぬ、という前提で友人、知人が動き回り、本づくりは驚くほどの速さで進んだ。翌年(二〇一一年)二月二十八日に「介護保険論」(中央法規)の出版記念パーティーが予定された。場合によっては、私を追悼する会に変えることも考えられていたようだ。

「介護保険論 福祉の解体と再生」 池田省三著(中央法規出版 3,570円)


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介護保険施行から10年を経過し、制度の見直しに関する議論も活発になった今日において、改めて制度の本質や影響等について広範かつ独自の視点で論述する。
介護保険の思想、目指すべき改革の方向等について、制度の本質を踏まえながら論じた、行政関係者・研究者必読の一冊。


 手術から一年五カ月。私は、抗がん剤の副作用で体に不具合が出たりしているが、それでもまだ生きている。その理由の一つは抗がん剤が予想以上に効いたこと。そして、勤務していた大学を辞め、さまざまなストレスから解放されたことが大きい。それで、免疫力が上がったように感じている。

 がんになる前は、死は向こうから忍び寄ってくるものと思っていた。だが、がんと分かってからは、こちらから死に向かって行くものなのだ、と認識が変わった。

 日本人は、三人に一人ががんで亡くなる。その中でも、大腸がんが目立って増えている。今後、私の症状がどう変わっていくかは、分からない。抗がん剤がいつ効かなくなるかもしれない。だが、残されている時間に、私の体験をお伝えしたいと思う。それが、がん患者や家族の方々に役立つことを信じて。

       ◇

 介護保険の専門家として知られる、龍谷大(大津市)の池田省三名誉教授が大腸がんを患った。五年後の生存率は10%とされるステージ4。手術と抗がん剤による治療を受けている池田氏の日常生活をつづる「ステージ4 がんと生きる」は随時、掲載します。

  (構成・鈴木伸幸)

 いけだ・しょうぞう 1946年10月、岐阜市生まれ。中央大法学部卒業後、73年に自治労本部に入り、社会保障を担当。87年、地方自治総合研究所へ出向、事務局長、政策研究部長を歴任。99年に龍谷大助教授、2000年に同教授。専門は政策科学。主な著書に「介護保険法」など。

「介護保険論 福祉の解体と再生」 池田省三著(中央法規出版 3,570円)


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福祉の解体と再生 池田省三 中央法規出版発行年月:2011年03月 ページ数:372p サイズ:単行


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商品情報
・発売日: 2011年03月
・サイズ: 単行本
・ページ数: 372p
・ISBNコード: 9784805834428

【目次】
序章 社会政策を転換する介護保険
第1章 介護保険の思想
第2章 介護保険のめざすシステム構築
第3章 介護保険の一〇年と現在
第4章 介護保険の改革方策
補章 介護保険創設と二〇〇〇年施行の過程

【著者情報】
池田省三(イケダショウゾウ)
1946年、岐阜市生まれ。中央大学法学部卒業。自治労中央本部で社会保障を担当の後、1987年に地方自治総合研究所へ出向、事務局長、政策研究部長を経て、1999年に龍谷大学助教授、2000年より同教授。専門分野は政策科学、1995年より、介護保険制度を継続的にウォッチングしている。地域ケア政策ネットワーク(C2P)研究主幹、社会保障審議会介護給付費分科会委員、「介護の社会化を進める一万人市民委員会2010」政策委員



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