『魚は痛みを感じるか?』ヴィクトリア・ブレイスウェイト著、高橋洋訳(紀伊國屋書店 2100円)

魚が痛み感じる能力 ヒトの新生児や早産児以上であると判明
NEWSポストセブン2012.04.02 07:00


【書評】
『魚は痛みを感じるか?』/ヴィクトリア・ブレイスウェイト著/高橋洋訳/紀伊國屋書店/2100円(税込)


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 確かにそのことを考えたこともなかった。生物学者の間ですら事情はほとんど同じだったという。魚はヒトと形態も棲息方法も全く異なり、表情も変化せず、声も出さないように思える。だから「魚は痛みを感じるか」と問われた時、意表を突かれた思いがするのだ。

 イギリスの魚類学者が書いた本書によれば、痛みを与える事象に神経系が反射する無意識的な段階と、脳が痛みに気づき、苦しむ意識的な段階の2つがあって初めて「痛みを感じる」と言えるのだという。

 結論を言えば、マスを使った観察、実験、検証によって〈魚には痛みや苦しみを感じる能力が備わっていることを示す数多くの証拠〉が見つかり、〈その能力は、ヒトの新生児や早産児以上〉であることが判明したというのだ。

 この事実は驚くべき事であると同時に、厄介な問題を孕んでいる。〈ある動物に痛みのために苦しむ能力があると認めれば、その動物に対する私たちの接し方や扱い方、あるいは世話の仕方を変える必要が生じる〉からだ。

 動物愛護ならぬ「魚愛護」が求められるのだ。その漁獲方法、養殖方法、釣りの方法は無用な痛みや苦しみを魚に与えていないか。与えているならば、改善すべきではないか。著者は欧米人にありがちな狂信的「魚愛護主義者」ではなく、科学者として客観的な事実を提示し、冷静な問題提起を行なっている。

 種によっては数年間にも達する記憶力を持つ魚も存在することなど、魚の意外な知性の高さについての記述も面白い。本書の表紙には釣り針を口に引っ掛けられた魚の写真が使われているが、本書を読み終えると、不思議なことに、魚には人格も感情もあり、魚が悲鳴を上げているように思えてくる。

「魚は痛みを感じるか?」 ヴィクトリア・ブレイスウェイト著、高橋洋訳(紀伊国屋書店 2,100円)


魚は痛みを感じるか?
紀伊國屋書店
ヴィクトリア・ブレイスウェイト

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魚は痛みを感じるか?
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ヴィクトリア・ブレイスウェイト 高橋洋 紀伊国屋書店発行年月:2012年02月 ページ数:259p


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商品情報
・発売日: 2012年02月
・サイズ: 単行本
・ページ数: 259p
・ISBNコード: 9784314010931

【内容情報】
痛みとは何か?そしてそれを感じるとはどういうことか?魚の「意識」というやっかいな領域に踏み込み、この難問に結論を下した著者は、漁業や釣り、観賞魚などにおける人間の魚への対し方ー「魚の福祉」という難題を読者に問いかける。魚類学者のニュートラルな視点による、問題提起の書。

【目次】
第1章 問題提起
第2章 痛みとは何か?なぜ痛むのか?
第3章 ハチの針と酢ー魚が痛みを知覚する証拠
第4章 いったい魚は苦しむのか?
第5章 どこに線を引けるのか?
第6章 なぜこれまで魚の痛みは問われなかったのか?
第7章 未来を見据えて

【著者情報】
ブレイスウェイト,ヴィクトリア(Braithwaite,Victoria)
米・ペンシルベニア州立大学教授(生物学魚類専攻)。オックスフォード大学博士号(動物行動学)を取得後、魚類の認知や行動の調査研究を行う。2003年にマスの痛みの知覚についての共同研究がイギリスで大きな話題を呼び、テレビ・新聞などの取材が殺到した。2006年魚類生物学への貢献に対して、イギリス諸島魚類学会から賞を授与されている。

高橋洋(タカハシヒロシ)
同志社大学文学部卒。IT企業勤務を経て翻訳家

※SAPIO2012年4月4日号

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