この国の政治を再生させるには、国民自らが過去を振り返り、明日への指針を見出していくしかない

舛添レポート
この国の政治を再生させるには、国民自らが過去を振り返り、明日への指針を見出していくしかない!
現代ビジネス2012年06月26日(火)舛添 要一


国民が主役であり、つけを払うのもまた国民である

 今日の政治は混迷の度を増している。その体たらくに国民は唖然とし、政治不信も極限にまで達している。野田内閣に対して民主党から何人が反旗を翻すか、54人以上か、以下かといった話題が、この一週間の政治欄を賑わせている。まさに政局だからである。

 しかしながら、このあたりで政権交代前後の政治状況から現在までを振り返ってみて、政治がここまで劣化した原因について考察すべきではなかろうか。結局は、「国民が主役」であり、投票行動によって政権交代を実現させた国民が、今や、そのつけを払っているのである。しかし、そのように国民を誘導した人々の責任もまた忘れてはならない。

 私は、安倍、福田、麻生の三内閣で厚生労働大臣を務めたが、医師不足、年金記録、C型肝炎、中国産毒入り餃子、派遣労働、新型インフルエンザなど、山積する問題の処理に追われた日々であった。その詳細は、拙著『厚生労働省戦記---日本政治改革原論』(中央公論新社)に記したが、まさに全力で問題解決に当たった。

「厚生労働省戦記 日本政治改革原論」 舛添要一著(中央公論新社 1,575円)


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消えた年金、医療崩壊、薬害肝炎訴訟、新型インフルエンザ。舛添要一厚生労働大臣が、政官業の癒着と格闘した七五二日間の記録。

厚生労働省戦記―日本政治改革原論
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舛添 要一

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日本政治改革原論 舛添要一 中央公論新社発行年月:2010年04月 ページ数:306p サイズ:単行


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商品情報
・発売日: 2010年04月
・サイズ: 単行本
・ページ数: 306p
・ISBNコード: 9784120041181

【内容情報】
消えた年金、後期高齢者医療制度、産科たらいまわし、薬害肝炎訴訟、新型インフルエンザ、ハケン切り…。民主党では対応できない。舛添要一が大臣として政官業の癒着と格闘した七五二日間の全記録。

【目次】
序章 この国の問題を凝縮したような役所で
第1章 迷走する後期高齢者医療制度
第2章 医療再生を阻む官僚と医師会
第3章 消えた年金記録問題
第4章 新型インフルエンザ
第5章 薬害肝炎訴訟とメディアの大罪
第6章 原爆症認定訴訟

【著者情報】
舛添要一(マスゾエヨウイチ)
1948年、福岡県生まれ。71年、東京大学法学部政治学科卒業。東京大学政治学助教授などを経て、舛添政治経済研究所を設立。2001年、参院選の比例代表(全国)において、158万8262票を獲得として自民党トップで初当選。参議院外交防衛委員長、自民党憲法審議会会長代理、参議院自民党政策審議会会長などを歴任。07年8月、安倍晋三内閣に厚生労働大臣として初入閣。福田康夫内閣、麻生太郎内閣でも引き続き厚生労働大臣を務めた。


 しかし、常に野党やマスコミの厳しい批判に晒された。何とか反論しつつ、実際に一つ一つ問題を解決して実績を重ねてきたが、そのような努力も虚しく、3年前の総選挙で自民党は敗れ、野に下ってしまった。

マスコミが実現させた政権交代

 「政権交代」とか「コンクリートから人へ」とかいうスローガンが実に有効であり、後期高齢者医療制度廃止、子ども手当の支給、最低保障年金の創設などといった政策が有権者の心を掴んだ。そして、その背景には、マスコミ、とりわけテレビメディアの援護射撃があった。政権側を執拗に攻撃し、官僚を悪玉に仕上げていく。

 テレビは思考過程を短縮して善悪二元論で問題を示す。限られた時間内で視聴率をあげるためには、それが一番手っ取り早い。活字は読者が反復して読むことができるので、このような単純化は要求されない。国民の活字離れが進むにつれて、複雑な連立方程式を解くような思考方式はすたれていく。

 悪いのは自民党政権、後期高齢者医療制度、現行年金制度、厚生労働省の役人、といった単純化された説明が、繰り返しテレビで放映される。評論家たちも総動員させられる。そして、このかっ"悪"を退治するための即効薬が政権交代だと洗脳されてしまう。

 もちろん、杜撰な年金記録の管理は批判されねばならないし、医療制度に見られるような政官業の癒着は問題である。カネと票を得るために、政治家が国民よりも業界の利益を優先したり、官僚が自己保身のために既得権益を死守したりすることは、当然のことながら厳しく弾劾されねばならない。自民党がそのような点を改革せずに、族議員たちの跋扈を許してきたことが、政権を追われる原因になったのである。

 民主党の主張が実現可能かどうかはよく分からないにしても、まずは旧態依然たる自民党政権を追放することが大事だ、という考え方が政権交代の原動力となり、夢を語ったマニフェストがマスコミにもてはやされた。マニフェストが実現可能か否かを判断する材料をマスコミは持ち合わせていないし、マスコミに動員されるコメンテーターの知的能力など論外である。

 しかし、政権交代は実現した。要は、悪者よりもユートピア論者のほうに期待したわけである。しかし、この3年間の民主党政権を経て言えるのは、悪も駄目だが、無能もまた国を破滅に導くということである。政権交代は、極論すれば、マスコミが実現させたようなものである。そのマスコミは、次にどのような政権を作ろうとしているのであろうか。

保守から反動へ向かう自民党

 民主党も、マスコミも、そしてそこに動員されたコメンテーターたちも、誰一人として、この3年間の混乱の責任を取ろうとしない。ジャーナリストたちが、自分の書いた記事や発言内容について責任を取ったという話は聞いたことがない。原発事故の責任者が平気でエネルギーを担当する役所の長になるような政党が民主党である。

 自民党もまた、過去を反省し、政策をさらに優れたものにし、自己改革を進めるという姿勢がない。民主党政権が失敗したら、過去の自分たちの政策に逆戻りすればよいと思っているらしい。

 民主党の政策にも採用すべきものがある。「控除から手当へ」という主張などがそうである。しかし、自民党は、昔の言葉で言えば、保守から反動へと向かっており、リベラルな要素を切り捨てていっている。これでは、国民政党の看板が泣く。

 政党も、政治家も、メディアも、コメンテーターも、そして国民自らも、過去を静かに振り返り、明日への指針を見出すしか、もはやこの国の政治の再生はありえないような気がする。





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