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zoom RSS 検証:資産家夫婦殺害事件…資産家殺害事件で関心が集まる「ファンドマネジャー」の仕事とは?

<<   作成日時 : 2013/02/07 22:27   >>

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山崎元のマルチスコープ【第267回】
Diamond2013年2月6日
山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員
]


資産家殺害事件で関心が集まる「ファンドマネジャー」の仕事とは?

誰でもファンドマネジャーになれるか

 スイス在住の資産家でファンドマネジャーの霜見誠氏夫妻が殺害された事件をきっかけとして、「ファンドマネジャー」という職業に関心が集まっている。特に、一部で霜見氏が「年収5億円」と報じられたことが、大きな要因のようだ。いったいどのようにして、そのような高収入が可能なのかとの興味を惹いたようだ。

 ファンドマネージャーとは、ひとまとまりのお金を指す「ファンド」(日本語を当てると「基金」)を「運用」(マネージ)する人を指す言葉だ。たとえば「アナウンサー」のように、一種の専門職だと言えるが、立場や仕事ぶりは多様だ。アナウンサーと同様、資格なしに誰でもなることができる職業だ。

 会社に認められるか顧客が付けば、人は簡単にファンドマネジャーになることができる。運用会社をつくる際に登録が必要だったり、業務の種類によっては免許が必要だったりするが、ハードルは高くない。

 日本には、ファンドマネジャーと呼べる人が、1千数百人くらいいると思われるが、その多くは、金融機関に勤務するサラリーマンだ。信託銀行、投資信託運用会社、投資顧問会社、保険会社などが主な勤務先であり、サラリーマン・ファンドマネジャーの場合、運用成績によってボーナスが上下する場合があるとしても、年収の水準は、所属する金融機関の普通のレベルであることが大半だ。

 主に外資系の運用会社などで、それなりに高給で処遇されるケースもあるが、概して言えば、外資系証券会社のトレーダーやセールスマンよりも収入面では地味だ。

 一方、本人やその仲間が運用会社を立ち上げてビジネスを行う場合、高収入が可能になる場合はある。それは主に、成功報酬型の契約による。

 ヘッジファンドと呼ばれる運用形態をはじめとして、独立系の運用会社が少数の顧客を相手に運用を受託する場合に、運用資産額の1〜2%くらいの固定的な運用手数料に加えて、「儲けの2割」というくらいの成功報酬契約を結ぶ場合が多々ある。

 たとえば、100億円を運用して3割儲かった場合には、成功報酬だけで6億円となるので、少人数の運用会社であればファンドマネジャーの年収が億円単位になる可能性は十分ある。

霜見氏の年収5億円は妥当?
高収入の源は「成功報酬」


 殺された霜見氏が、どのような顧客を相手に、どんな契約の下で資金を運用していたのか、現時点ではわからないが、数百億円の資産を運用していた時期があるようなので、「年収5億円」という年があっても不思議ではない。

 成功報酬型の手数料契約は、金融論的には運用資産の資産価値を原資産とするコール・オプションと経済的性質が等しく、その理論的な価値は、主にどれくらいのリスク(ボラティリティ)をとるかで決まる。

 率直に言って、「儲けの2割」という成功報酬は、通常の年率の固定的な手数料に換算すると高いことが多いし、しかも運用する側は自分でファンドのリスクを拡大することができるから、いわばお手盛りで報酬水準を拡大できる。

 成功報酬型の取引慣行は、世界的に広く行われているものではあるが、運用者側に著しく有利な場合が多く、筆者は「契約する側が金融論的に無知で愚かなのだ」と感じる。

 もっとも、年金基金のように他人のお金ならば問題だが、自分のお金をファンドマネジャーに任せる際に、納得してカモになるなら文句を言う筋合いではない。

 海外では1990年代から、日本でも2000年以降くらいから、独立系の運用会社を立ち上げる金融マンが目立つようになったが、これはこの種の成功報酬契約が「美味しい」からだ。

 もっとも日本の運用業界の場合、大手の銀行・証券・保険など、既存の金融機関の子会社が運用業界に占める割合があまりに大きく、独立系の個性的な運用会社の存在感が乏しかったが、成功報酬型の運用契約の普及は、独立系の運用会社を増やすことに少々貢献したという側面もあったとは言える。

大半は普通の金融機関並みの給料
派手ではないが、気分はいい


 さて、話を元に戻すと、ファンドマネジャーの大半は金融機関勤務のサラリーマン・ファンドマネジャーであり、運用する金額は数百億円、数千億円になることが珍しくないとしても、その収入は「普通の金融機関サラリーマン」の範疇だ。生活ぶりも、芸能ニュースに登場するような「外資系金融マン」と比較すると、ずっと地味なことが多いはずだ。

 ファンドマネジャーは、ファンドの資産を運用することによって増やすのが仕事だが(結果的に減ることはよくあるが、増やすことを目指しているはずだ)、運用対象は、内外の株式、債券、預金(外貨預金を含む)、各種の金融派生商品、商品、不動産など、運用対象は多様だ。何で運用するかは、運用会社とファンドマネジャーの得手不得手や、何よりも顧客との契約の内容で決まる。

 一番イメージし易いのは、株式に投資するファンドマネジャーだろうか。1日の流れを見ると、朝早めに出社して情報を集め、同僚と情報交換と運用方針の決定のために打ち合わせをして、朝の9時の株式取引スタートに臨み、午後3時の取引終了後は、会議を行ったり、資料を作ったり、企業調査に出かけたりする、といった仕事ぶりが典型的だ。

 投資対象・候補企業の工場を見学したり、経営者にインタビューしたりするタイプのファンドマネジャーもいるし、データとコンピュータを使って各種の分析を行うことが中心のファンドマネジャーもいる(筆者は後者だった)。

 ところで、金融業界には、「バイ・サイド」と「セル・サイド」という言葉がある。前者は、ファンドマネジャーが所属する運用業界側を指す言葉で、後者は顧客としてのファンドマネジャーを商売の対象とする証券会社側を指す言葉だ。

 率直に言って、バイ・サイドは自分にセールスする立場のセル・サイドに対しては立場が強い。セル・サイドは、しばしばファンドマネジャーの機嫌を取らなければならない。

 また、資金を投ずる立場なので、ファンドマネジャーが投資対象企業の経営者に面会を求めた場合などにも、割合簡単に会うことができるし、経営者もファンドマネジャーを丁重に扱うことが多い。


 総合的に見て、ファンドマネジャーは、人間関係の上で「気分のいい」仕事といっていいだろう。

勝てるか否かはおおむね五分五分
不確かな運用パフォーマンス


 しかし、ファンドマネジャーにも悩みがある。全てのファンドマネジャーに共通の悩みは、運用パフォーマンスが思うに任せないことだ。

 去年まで優秀な運用成績を上げていたファンドマネジャーでも、今年市場平均に勝てるか否かはおおむね五分五分なのだ(厳密には、五分五分を下回る)。運用の手数料を考慮に入れると、ファンドマネジャーの運用成績は市場の平均を下回ることの方が多い。

 しかも、過去に優秀なパフォーマンスを上げていても、将来のパフォーマンスが優れているか否かについては、大まかには五分五分なのだ。つまり、いつでも、そして、いつまで経っても、自分の運用成績に対して自分で自信を持つことができない。

 また、たとえば何十年も運用経験のあるベテランのファンドマネジャーでも、「これから競争しよう」という条件では、「運のいい素人」にはとてもかなわないのが実情だ。

 運用パフォーマンスに関するストレスは、根本的に消えようがない。ストレスで判断が狂う「ストレスが頭に来る」タイプや、ストレスで胃が痛む「ストレスが腹に来る」タイプは、ファンドマネジャーには向かない。

 ファンドマネジャーにとって運用パフォーマンス以外にもう1つあるストレス源は、顧客に関するものだ。

 通常のビジネスにあって、ファンドマネジャーにとっての最悪の事態は、顧客による「解約」だ。解約されると収入がなくなるし、仕事の対象自体がなくなる。努力のしようもなくなるのだ。

 したがって、パフォーマンスの悪いときにも、顧客にその状況を納得して貰いつつ、今後に期待をつないで貰うための、「洗練された、真剣な、言い訳」の技術が必要になる。

セールスが上手い人が勝つ
独立系は実質セル・サイド


 また、特に独立して会社をつくったファンドマネジャーだと、証券会社や投資先に対しては「バイ・サイド」であっても、顧客及び潜在顧客に対しては100%「セル・サイド」の立場に立つことになる。

 たぶん、運用が上手いよりもセールスが上手い方が、独立系のファンドマネジャーとして成功できると言い切っても間違いではないだろう(注:運用の上手さは、そもそも安定したものではない)。

 自分で運用会社を経営している場合、運用資産を求めて、さまざまな相手にアプローチすることになるし、その中には、後でトラブルになりかねない「普通でない客」が紛れ込むことがあり得る。運用資金を獲得する営業活動も重要なのだが、顧客を選ぶことも大切なのだ。

 俗に、お金は「命の次に大切なもの」と言われる。つまりお金は大切だが、運用の、つまりお金に関する失敗で、命まで取られるという事態は尋常ではない。

 顧客が「普通」の相手なら、悪い場合で「解約」、よほど腹を立てた場合でも、契約や法令の違反なりで相手を訴えて、賠償金を取ろうとしたり、運用の仕事ができなくしたりしよう、といったことが起こり得るかも知れないが、ファンドマネジャーを「殺そう」とすることはないだろう。

 殺された霜見氏は、まったくお気の毒なことであったが、「普通」ではない顧客のお金を預かってしまったのではないだろうか。

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