「日本の黒い霧」スパイ説に断り書き 伊藤律遺族「文春側の訂正」 (東京新聞2013年4月21日)
【社会】
「日本の黒い霧」スパイ説に断り書き 伊藤律遺族「文春側の訂正」
東京新聞2013年4月21日 朝刊>
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013042102000121.html
松本清張の代表作「日本の黒い霧」上下巻
作家の松本清張が代表作「日本の黒い霧」で、共産党元幹部の伊藤律を特高警察のスパイだったなどと記述していることについて、遺族から誤りだと指摘された発行元の文芸春秋が、異例の断り書きを入れることが、遺族側への取材で分かった。遺族側は事実上の訂正とみて評価している。 (森本智之)
作品は、戦後の混乱期に起きた事件の謎を追う全十三話のノンフィクション。一九六〇年に月刊文芸春秋で連載された。この中では伊藤が日米開戦前夜、日本で活動するソ連のスパイを、特高に密告した疑いがあるなどと記述されている。ドイツ人のゾルゲら二人が死刑となり「ゾルゲ事件」として知られる。
この説は戦後の米国側の公表が基になった。元特高関係者に認める証言もあり、清張の作品などを通じて定説化した。伊藤は共産党から除名処分を受け、渡航先の中国で二十七年間投獄。八〇年に帰国したが、九年後に死亡した。
生前、一貫して事件への関与を否定したことから、没後に知人らが「名誉を回復する会」を結成。ソ連崩壊による新資料の流出などで研究が進み、特高内で捜査幹部が「事件の検挙全体が伊藤の口一つから出たかと言うと絶対にそうではない」と語った議事録なども見つかった。伊藤スパイ説は「共産党の内部対立をあおるため当局が仕組んだ」との見方が強まっていた。
遺族側は二月、文芸春秋に出版差し止めを求め、同社は今月、文庫版に二ページ程度の断り書きを入れると説明。遺族側に提示した断り書きでは、資料の乏しかった執筆当時の時代背景を説明し「現在から見れば伊藤氏が戦前戦後の政治情勢、共産党内部の対立の中で運命を翻弄(ほんろう)されたことは明らかです」としている。次男の淳さん(66)は「今年は父が生まれて百年、党の除名から六十年。大きな一歩になった」と述べた。
「日本の黒い霧」スパイ説に断り書き 伊藤律遺族「文春側の訂正」
東京新聞2013年4月21日 朝刊>
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013042102000121.html
松本清張の代表作「日本の黒い霧」上下巻
作家の松本清張が代表作「日本の黒い霧」で、共産党元幹部の伊藤律を特高警察のスパイだったなどと記述していることについて、遺族から誤りだと指摘された発行元の文芸春秋が、異例の断り書きを入れることが、遺族側への取材で分かった。遺族側は事実上の訂正とみて評価している。 (森本智之)
作品は、戦後の混乱期に起きた事件の謎を追う全十三話のノンフィクション。一九六〇年に月刊文芸春秋で連載された。この中では伊藤が日米開戦前夜、日本で活動するソ連のスパイを、特高に密告した疑いがあるなどと記述されている。ドイツ人のゾルゲら二人が死刑となり「ゾルゲ事件」として知られる。
この説は戦後の米国側の公表が基になった。元特高関係者に認める証言もあり、清張の作品などを通じて定説化した。伊藤は共産党から除名処分を受け、渡航先の中国で二十七年間投獄。八〇年に帰国したが、九年後に死亡した。
生前、一貫して事件への関与を否定したことから、没後に知人らが「名誉を回復する会」を結成。ソ連崩壊による新資料の流出などで研究が進み、特高内で捜査幹部が「事件の検挙全体が伊藤の口一つから出たかと言うと絶対にそうではない」と語った議事録なども見つかった。伊藤スパイ説は「共産党の内部対立をあおるため当局が仕組んだ」との見方が強まっていた。
遺族側は二月、文芸春秋に出版差し止めを求め、同社は今月、文庫版に二ページ程度の断り書きを入れると説明。遺族側に提示した断り書きでは、資料の乏しかった執筆当時の時代背景を説明し「現在から見れば伊藤氏が戦前戦後の政治情勢、共産党内部の対立の中で運命を翻弄(ほんろう)されたことは明らかです」としている。次男の淳さん(66)は「今年は父が生まれて百年、党の除名から六十年。大きな一歩になった」と述べた。
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