【放送芸能】「おのれナポレオン」交代劇 急場救った女優の力量 (東京新聞2013年5月15日 朝刊)

【放送芸能】
「おのれナポレオン」交代劇 急場救った女優の力量
東京新聞2013年5月15日 朝刊

http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2013051502000145.html


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 東京芸術劇場(=芸劇、東京都豊島区)で上演していた舞台「おのれナポレオン」(三谷幸喜作・演出)。天海祐希が心筋梗塞で降板し、宮沢りえが急きょ代役として起用された。数日の稽古期間しかなかったにもかかわらず、今月十日から千秋楽の十二日までの四公演を務め上げた。舞台では何が起こるか分からないといわれるが、異例の交代劇だった。(山岸利行)

 十二日昼に上演された千秋楽公演。ナポレオン(野田秀樹)の愛人アルヴィーヌを演じきった宮沢に終演後、観客から万雷の拍手が送られた。「天海版」が強さと妖艶さを備えていたのに対し、「宮沢版」は優しく、かわいらしさを感じさせるアルヴィーヌ。急ごしらえの違和感はなかった。宮沢が発言することはなかったが、舞台裏ではとてもリラックスしていたという。

 ナポレオンの死の真相を歴史ミステリー風に描く戯曲。三谷と野田という、日本の演劇界の最前線に立つ二人が手を組み、山本耕史、内野聖陽ら人気と実力を兼ね備えた出演者による話題作。四月六日に始まり、終盤を迎えた五月六日の公演後、天海が「体がだるい」と入院。その後、降板が決定。

 「何度も再演され、よく知られた作品なら経験のある俳優を代役に立てることもあり得た」と関係者は話すが、新作でもあり「普通ならここで打ち切り」だった。だが、芸劇の芸術監督も務める野田と三谷が「何とか最後まで続けられないか」と模索。「天海版」を観劇している上、二人がともに信頼し、せりふ覚えが早いことで知られる宮沢に「白羽の矢」が立った。「芸能界における“格”も無視できず、天海の抜けた穴を埋めることができる女優として宮沢が起用された」とみる関係者もいる。

 ピンチを救った宮沢だが、驚くべきはそののみ込みの早さ。稽古を始めたのが八日午後で、舞台に立ったのが十日夜。公演によっては万一に備え舞台袖でせりふをささやく係を配置する場合もあるが、今回はそうした措置はなく、「宮沢さんはすべて頭に入っていたようです」と芸劇。ただ、二時間二十分におよぶ舞台で、舞台上にいない時は、袖で台本を確認する作業は欠かせなかっただろう。

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 公演にもよるが、稽古は一カ月前くらいから始めることが多い。それまでにせりふを覚えておき、稽古で入念に台本を読み合わせ、立ち稽古と進んでいく。数日の稽古で本番を迎えるのは考えられない。

 今回の交代劇をベテラン俳優の平田満は「僕なら尻込みしてしまう。他の共演者の方の協力もあったのだろうが、かなり力量がいると思う。製作現場の大変さは想像もつかない」と話し、宮沢の代役出演を「すごいなあ」と驚く。

 そもそも俳優はせりふをどのように覚えるのだろうか。斉藤由貴は「台本をよく読んで、それを映像にしてイメージをふくらませる」、田島令子も「字面だけ覚えてもだめ。台本を覚えて、それが映像になって初めて頭に入ったことになる」。文字を映像に変換することがせりふ覚えのコツなのかもしれない。

 芸劇の高萩宏副館長は「舞台はすでに出来上がったものを見せているのではなく、常につくっているところを見せているもの」と話す。日々新たに生まれ変わるのが舞台といえる。

◆天海祐希が退院
 心筋梗塞で入院し、舞台「おのれナポレオン」を降板した天海祐希が十三日に退院したと、所属事務所が十四日、明らかにした。

 天海はコメントを発表。観客や舞台関係者に謝罪した上で「千秋楽まで舞台に立ちたいという思いは変わりませんでしたが、病状を悪化させればかえって多大な迷惑をかけるので、降板という苦渋の決断をしました」と説明。「一日も早く皆さまに元気な姿を見ていただけるよう、頑張ります」と復帰に意欲を見せた。

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