NHK『あまちゃん』に出演する小泉今日子を見て思うこと (週刊現代 2013年5月4日号)

賢者の知恵
NHK『あまちゃん』に出演する小泉今日子を見て思うこと 
ほぼノーメークで素顔をさらすキョンキョンすごい覚悟だけど、ちょっと寂しい
現代ビジネス2013年05月04日(土)週刊現代

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35668

 朝ドラ『あまちゃん』の撮影に臨む小泉今日子のノーメークぶりが物議を醸している。「なんてったってアイドル♪」と歌ったキョンキョンも、もう47歳。そりゃシワくらいはあるだろうけど……。


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ここまでさらけ出すとは


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〈毎朝キョンキョンが拝めるありがたみ。NHKありがとう〉

〈小泉今日子の演技が素晴らしくて、開始5分で涙が出てきた〉

 という絶賛の声があれば、

〈小泉今日子の劣化がひどい……〉

〈こんなキョンキョン、わしは見とうなかった〉

 という声も。ネット上に賛否両論が溢れている。それほどにNHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』が、話題を呼んでいる。

「視聴率も初回から20%超えという7年ぶりの高水準です。ヒロインに抜擢された新進女優・能年玲奈をはじめとする隙のないキャスティング、コメディの名手・宮藤官九郎が手がけるNHKらしからぬ脚本、話題作『ハゲタカ』('07年)の制作チームによる行き届いた演出など、高視聴率の要因は色々あります。

 しかし、なかでもいちばんの理由は小泉今日子の際立った存在感だと思います」(元テレビプロデューサーで、上智大学教授の碓井広義氏)

 舞台は海女の後継者不足に苦しむ、東北の過疎の町「北三陸」(岩手県久慈市をモデルにした架空の町)。小泉今日子演じる天野春子は、ここに生まれた。

 春子は、高校に上がる頃には不良少女(ヤンキー)に成長。一方でその容貌から学園のアイドル的存在でもあった。そんな18歳の時、観光協会と母(宮本信子)に海女になることを強いられ、家出。東京に行ったまま、24年間帰らないばかりか、連絡さえしなかった。その間、東京で結婚し、アキ(能年玲奈)を産むが、離婚問題を抱え、娘を連れて故郷へ帰ってくる。いわゆる「出戻り」だ。

 故郷の友人たちに「海女を継いで北三陸を救ってくれ」と頼み込まれるが、「海女なんかやらない」と一蹴。彼らを田舎者と遠ざけ、絶縁状態だった母とは会う度に喧嘩し、娘を「暗くて存在感も個性も華もないパッとしない子」と罵り、時間を持て余した結果、昼間からパチンコに明け暮れる。そしてスナックで「田舎が嫌で飛び出した奴って、東京行ってもダメよね」とひとり言のようにつぶやくやさぐれようだ。

 そんな役を小泉はノーメークではないかと言われるほどの薄化粧で演じているから、「あのキョンキョンがここまでさらけ出すとは」と物議を醸しているのだ。今年47歳を迎えたという年齢が見た目にもありありと感じられて、ちょっと寂しい、という声はたしかにある。だが、ドラマを見続ければその印象は変わる、という意見も多い。

 たとえば元NHKアナウンサーの松平定知氏は、小泉の演技に賞賛を惜しまない。

「小泉今日子さんの華やかなアイドル時代を知るひとりとしては、彼女が『じぇじぇ!』(東北の方言で、驚いたときに使う)なんて言うとは想像もしませんでした。女優魂でしょう。過去にしがみついていたらできることじゃない。ノーメークもその覚悟の現れだと思います」

 彼女はもうとっくにアイドルの延長線上から飛び出しているということだ。

 昨年、小泉今日子が主演したドラマ『最後から二番目の恋』(フジテレビ系)で脚本を務めた岡田惠和氏は女優・小泉に絶大な信頼を寄せる。

「ドラマで登場人物の年齢を設定する場合、暗黙の了解として、その女優さんの実年齢よりも2~3歳若くするのが通例なんです。女性なら誰だって若く見られたいものですし、それが女優さんとなればなおさらだからです。だから、『最後から~』の小泉さんの役も、いつも通り3歳ほど若く設定しました。ところが、ご本人から『実年齢(当時は45歳)で行きましょう』と申し出てくれたんです。おかげでよりリアルな人間描写ができたと思います」

 小泉はこの『最後から~』の好演などが評価されて、ギャラクシー賞テレビ部門の個人賞を受賞している。

並みの女優にはできません

 四十路に入れば、それこそ女優のようにメークやライトアップをしない限り、シミやシワの一つや二つ、ないほうが不自然だろう。彼女は自身の見栄えよりも、演技のリアリティを追求して、ノーメークを選んだということだ。岡田氏が続ける。

「女優さんの中には、脚本の中身についてあれこれ口出ししてきた上、『この台詞はやめて』なんて注文をつけてきて、手を焼く場合があるんですが、小泉さんは『気にしないでどんどん書いて』と笑顔で言ってくれて、心強かった。

『最後から~』では、『(もしかしたら私)閉経かも』という普通なら断ってもおかしくない台詞も入れたんですが、何も言わずにやってくれました。

 本当にうまく年を取っているという印象です。等身大の役を演じるのがこんなにうまい人はいないんじゃないでしょうか。これから小泉さんが50歳、60歳になったときに、女優としてもっと生きてくるんじゃないか、と楽しみです」

 小泉が加齢を隠さずに演じる姿は、同性からの評価も高い。テレビコラムニストの桧山珠美氏は言う。

「生き方が抜群にかっこいい。無理して飾っている感じがしないんですよ。劣化していると言われても、それも味だよ、とそのまま見せてしまう。ある番組で若さの秘訣を問われた小泉さんは、『生まれてから死ぬまでを人の進化だとすると、年をとることは老いではなく進化だ』と話していました。うまいこと言います。

 美容や化粧の技術が進歩して、『美魔女』がちやほやされるアンチエイジング全盛の時代にあって、40代のありのままの姿を出している。若作りをしたって47歳は47歳でしょ、という清々しさを感じます。

 それでも開き直って老けこんでしまうわけでもないからすごい。いつまでも『また若い恋人でもいるんじゃないか』と思わせるなにかがある。彼女のような女優は他にいないと思います」

 化粧を厚く塗りたくり、強い照明を当てれば、シミやシワを隠すことはできる。実際、多くの大物女優たちはそうしているだろう。だが彼女は、時の流れに逆らうのではなく、女優として年齢を武器にしていくことを選択したのだ。

 前出の岡田氏は、『ちゅらさん』('01年)、『おひさま』('11年)などの脚本を手がけた経験から、『あまちゃん』における小泉の特異性と重要性を指摘する。

「小泉さん演じる春子という役は、これまでの朝ドラに登場したような『子どもたちを優しく包み込む』イメージの母親ではない。娘のアキを地味だなんだと罵ったり、すぐ怒鳴ったり、キツい母親です。

 特別な決まりはないんですが、朝ドラはやはり朝から見るものだから、あまりドギツいものや台詞は書きにくい。でも小泉さんの童顔と、あの独特の響きのある声なら、多少キツい台詞でも不思議と嫌な気持ちにならずに見られるんです」

 では、長年小泉今日子を見つめてきたアイドル評論家、中森明夫氏はどう見ているのか。中森氏は30年来のキョンキョンファンでもある。

史上最強のアイドルです

 中森氏も「ノーメークはえらい」と評した上で、さらに「『あまちゃん』はキョンキョンありきのドラマ」だと言い切る。

「『あまちゃん』をよく見ていくと、春子の娘・アキとその友人を中心とした青春ドラマ、春子の母を中心としたベテラン海女さんと北三陸の面々の田舎コメディ、とまったく別の二つのドラマが並行して展開されていることに気付かされます。前者は若者向け、後者は団塊世代向け。現代はドラマもこうして2世代が楽しめるように重層的に作らないとヒットしにくい。

 そしてその二つのドラマをつなぐ役割をしているのが、小泉今日子演じる春子なのです。主役はあくまで海女を目指す能年玲奈ですが、物語は小泉今日子を軸に進んでいる」

 さらに、NHKの発表によれば、『あまちゃん』は後半、新人海女として地元のアイドルとなったアキが、本格的なアイドルを目指し上京。全国47都道府県のご当地アイドルから選抜されたアイドルグループ『GMT(ジモト)47』の一員として奮闘する物語になるという。

 これまでの朝ドラらしく、海女さんを目指して悪戦苦闘するヒロインを描く一本道のドラマに見せかけて、実はAKB48を意識したアイドルドラマでもあるのだ。中森氏が続ける。

「アイドルのドラマだとなった時に、団塊世代にもわかるアイドルで、朝ドラの主役級を張れるのは、もう小泉今日子しかいない。若者世代も、小泉今日子がアイドルだったことは知っている。いわば、キョンキョンは世代を超えたアイドルなんです。AKB48のプロデューサーである秋元康も、史上最強のアイドルは小泉今日子だと明言しているくらいです」

 さらに『あまちゃん』を真剣に見ていくと、春子という役と、小泉今日子自身がシンクロしていることに気づく。ヤンキー、アイドル、離婚などなど。中森氏が紐解く。

「注目すべきは、1984年という年です。これは劇中で春子(小泉)が北三陸に嫌気がさして上京する年であり、現実の小泉今日子が所属事務所の方針に嫌気がさして、突如無断で髪を刈りあげてしまった年でもある。

 この断髪が同年代のおしゃれ感度の高い女性たちの支持を集めて、キョンキョンは後にアイドルとして初めて『an・an』の表紙を勝ち取りました。これはいわばただの厚木のヤンキーだった彼女が、原宿のおしゃれな女の子になり変わったエポックなのです。

 つまり'84年、劇中の春子は東北から東京へ、現実の小泉今日子は厚木から原宿へ、それぞれ大きな移動を果たすわけです。ちなみに彼女はこの年、『渚のはいから人魚』という、これまた海を舞台にした曲で自身初のオリコン1位を獲得しています。

 そしてこの翌年、秋元康プロデュースのもと、AKBの原型とも言える『おニャン子クラブ』が誕生。同時に小泉今日子は秋元康作詞の『なんてったってアイドル』で大ヒットを飛ばした。このように『あまちゃん』では、小泉今日子を中心にありとあらゆるものが符合していく。そうした観点で見ると、ドラマがもっと楽しめます」

 小泉今日子が『なんてったってアイドル』だったのは、もう28年も昔。シワのひとつもできて当たり前だ。彼女の奮闘は同世代、そしてさらに上の世代へのエールにもなるはずである。

「週刊現代」2013年5月4日号より

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