【検証 橋下徹】 話題の連載を期間限定公開! 週刊藝人春秋 橋下徹(1) 文・水道橋博士

話題の連載を期間限定公開!
週刊藝人春秋 橋下徹(1)
文水道橋博士プロフィール
週刊文春2013.06.25 07:00

http://shukan.bunshun.jp/articles/-/2842


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「阿川さん、今のボクなら絶対一発で命中させることが出来ますよ!」

 茶髪の橋下徹がサングラス越しに薄笑いを浮かべ言い放った。

 後に“聞く力”を天下に知らしめる阿川佐和子をして、耳を疑うほどのセクハラ・ジョークだった。

 今から7年前、2006年5月7日――。フジテレビ『スタ☆メン』という日曜夜の情報番組の生放送。司会は爆笑問題と阿川佐和子。この日の特集のテーマは「少子化大国ニッポン!」だった。

 コーナーの冒頭で「もうすぐ6人目がお生まれになるという橋下さんはいかがですか?」と紹介された時、「うん? 橋下徹って6人も子どもいるんだ?!」と目が止まった。

 当時、彼は文字通り“行列のできる”法律家で売り出し中のタレント。

 もとより子沢山とは聞いていたが「6人」という数字となると、然(さ)は然(さ)りながら純粋に驚いた(そして、その1年後には7人目が誕生!)。

 考えてみれば、弁護士は否認する被告人の味方でありながら、時には解任も辞さない覚悟で被告人を厳しく諭す役柄――まさに避妊と懐妊のサジ加減はお手のものなのか。

 日本の出生率低下を、女性の社会進出や長く続く不景気・低賃金が主な要因と説く仮説がある。その一方で世界的トレンドとして、社会が成熟し、高学歴になるほど少子化が進むという分析もある。

 またまたその一方では「ビッグダディ」に象徴されるヤンキー系一家の早婚、家族未計画性、文字通りの「無鉄砲」さも厳としてある。

 グラサンにノーネクタイでシャツの前がはだけたチャラいヤンキー系のルックス。なのに高学歴で高収入の子沢山弁護士。そんなアンビバレンツを全身に纏った当時の橋下徹は、その存在自体がすでに常人ではない過剰さを体現していた。

 そして、思い返せばこのワンシーンだけでも――恐れを知らぬ物言い、無計画とも思える向こう見ずで溢れかえるエネルギーの過剰さ――全てが今の橋下市長を想起させた。

 しかし、テレビは宇宙の裁判所だ。橋下“弁護士”といえども、内なる無意識の罪をも晒される“被告人”に過ぎない。

 言葉のハシバシに人格が現れる。

 コーナーに入って、一般人の子沢山ファミリーの日常を追ったVTRを見た後、阿川佐和子が「……やっぱり産んでおけば良かった。私の世代はデキちゃった婚はなかったから」と言った刹那、咄嗟の返しが冒頭の暴投の台詞だった。

 テレビの生放送に慣れた爆笑問題ですら呆れ返り「ハシモト! 完全なセクハラだぞ」「弁護士なら酒場でも言うことじゃない!」とツッコミをかぶせて異様な空気を収拾。セクハラには敏感なテレビのニュースショーの世界だ。失言を感知し、即座にお笑いで覆った。

デーブ・スペクターの仲介で東京へ

 この日、番組では「体罰問題」も扱っていた。「現役教師に聞いた『体罰は必要ですか?』」というタイトルの特集。スタジオで橋下徹は自信満々に「必要」と答えていたが、この言葉が後に180度変わるのは周知の通りであろう。

 ちなみに、橋下徹は当時、爆笑問題の事務所『タイタン』の所属タレントであり顧問弁護士だった。

 そもそも橋下徹という日本の政治史に大文字で刻印されるはずのキャラクターは大阪で発見され、かのデーブ・スペクターの仲介により東京へ移出された。

 大阪でのレギュラー出演の多いデーブは、在阪タレントを東京市場へ売り込むスカウト業の名手だ。

 巷間、デーブはCIAのスパイであるとの都市伝説が流布しているが、ボクに言わせれば、デーブこそテレビ界に暗躍するCIA(キャスティング・いじり・エージェント)だ。いや、正確には彼は日本のワイドショーの知られざる黒幕か。

 振り返って欲しい。尖閣諸島に香港活動家が上陸し中国船団が攻めてくると喧伝された昨年8月17日――。

 フジテレビ『とくダネ!』の第一報は「ピース綾部、藤田紀子と30歳差、熱愛発覚」だった。

 これは、どう考えてもニュースの優先順位がおかしい。何故に戦火の兆し、風雲急を告げるこの日に、よりによって“ピース”の話題だ。

 しかも、生放送中に、わざわざ藤田紀子が電話で生出演して「事実ではないです」と迷惑千万を装いながら「素敵な方です」と楽しげに語るというオノロケシーンを演じている。

 さらには当日の『ミヤネ屋』へも電話出演を果たした。もし実害のある報道ならノコノコとテレビに出演する必要などあるまい。

 その後も、この奇妙な歳の差カップルは、しばしバラエティの話題を独占しつづける。どころかネタ切れの芸能界に「熟女業界」という新ジャンルを創出し、つまり若手芸人と年増熟女をカップリングした「スキマ産業」ならぬ「トシマ産業」を産み出したのだ。いったい誰が、こんな仕掛けを発明したのか?

 長く疑問に思っていたが、ある日、デーブ・スペクターのホームページを見ていて気がついた。

 藤田紀子は、デーブが社長を務める芸能事務所、株式会社スペクター・コミュニケーションズの所属。つまり、スペクター親方のデーブ部屋に入門した女力士だったのだ。

 当然、『とくダネ!』『ミヤネ屋』のレギュラーであるデーブが、自らスタッフにこのネタを提供し、ゴシップの土俵を作ったに違いない。

 東シナ海のガチンコ問題を「シタのシナいの」オチンコの話題が土俵際に追いやったのはこうした事情があった(余談だがデーブは、宮根誠司に隠し子が発覚した際にはTwitterで「隠し子の件を尋ねられ、宮根さんが正直に一言→ひにんしません」と、してやったりな毒ガスも放っている)。

 そんなデーブこそが、橋下徹の異能に早くから目をつけ、活躍の場を広げた張本人だったのだ。

「週刊誌で今、橋下徹は……」


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すいどうばしはかせ/1962年岡山県生まれ。23歳でビートたけしに弟子入り後、87年に玉袋筋太郎と浅草キッドを結成。そのまんま東、草野仁などの生き様を活写した『藝人春秋』(文藝春秋)が絶賛発売中です。


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 今年の2月25日――。紀尾井町にある文藝春秋のロビーのソファー。週刊文春の新谷編集長がボクの目の前に座っている。

 今や、毎週のようにスクープを飛ばす雑誌界の必殺仕掛け人。

 銀縁のサングラス越しに薄笑いを浮かべ言い放った。

「博士さんの著書『藝人春秋』も先日の阿川佐和子さんとの対談も素晴らしかった。ぜひ『週刊文春』でエッセーの連載をお願いします!」

「エッセーではなく別のものなら」

「別のもの? と申しますと……?」

「『藝人春秋』の続編を現在進行形でやりたい。タイトルはズバリ『週刊藝人春秋』!」

「ほーー! と言うことは人物伝ですね。となると初回のツカミは読者にとってもセンセーショナルな人を捕まえないとね」

「もちろん……橋下徹を書かせてください!」

「は・し・も・と?!」

「はい、橋下徹で第一回を!」

「博士、ご存知でしょうが……週刊誌で今、橋下徹は……」

「まかせてください、絶対、一発で命中させることが出来ますよ!」

(つづく)


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