イチローが「本当の天才」と言った男、引退へ

イチローが「本当の天才」と言った男、引退へ
(更新 dot.asahi.com2013/10/ 3 16:00)

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2007年に2千本安打を達成した前田智徳 (c)朝日新聞社 

「私も広島市内で見知らぬ人から『おめでとうございます』と挨拶(あいさつ)されました」

 こう言って笑うのは、野球解説者の北別府学氏(56)。1976年から94年まで広島カープ一筋で、抜群の制球力から「精密機械」と呼ばれた、通算213勝の大エースだ。

 広島は9月25日、中日に勝ってセ・リーグの3位以上を確定させ、初のクライマックスシリーズ(CS)進出を果たした。なにせAクラス入りは16年ぶり。何度もシーズン終盤の大失速でBクラスに甘んじてきた。「優勝じゃないのに」というツッコミもあろうが、それは広島に関してはヤボというものだ。

 実は今春、北別府氏は『CARPはなぜCSに出られないのか… 手を伸ばせば、すぐそこに…』というタイトルの本を出版。CS進出をかなえる戦力は十分にあるとつづっていた。苦節16年のリベンジは、特に中継ぎ陣の奮闘と盗塁数の増加が大きかったという。

「走塁には好不調の波がありません。Aクラス入りは、足を使った攻撃が力を発揮したからです」

 応援し続けたファンにとっても、悲願だった。

「生まれてからずっとBクラスしか知らないという、若いファンの方々もいます。ファンに最低限のお返しができたのではないでしょうか。呪縛が解けた今、日本一も決して夢物語ではないと思うのですが……」

 喜びに浸るカープファンを驚かせたのが、27日の前田智徳外野手(42)の引退発表だった。前田といえば、あのイチローをして「本当の天才は、前田さんですよ」と言わしめたスラッガー。しかし、95年に右アキレス腱(けん)を断裂するなど、故障に悩んだ野球人生でもあった。

 北別府氏には前田との忘れ難いエピソードがある。

 92年9月13日の巨人戦。5回、巨人・川相が放った中前への打球を前田が後逸し、ランニングホームランとなる。北別府氏は、それで勝利投手の権利を失った。8回、前田の2ランで広島が勝利するも、前田はベンチで泣き、試合後のヒーローインタビューに現れなかった。北別府氏は言う。

「後日、『気にするな』と言いました。僕をもり立てようと、積極的にプレーした結果ですから。自分に似た職人タイプ。あと2年は代打の切り札でやれたはず。残念ですね」

 赤ヘルを代表する選手たちの思いも受け継ぎ、広島は10月12日からのCSファーストステージに挑む。

※週刊朝日  2013年10月11日号


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