【安倍晋三ヨイショのおめでたい人々】  安倍首相の「イスラム国脅迫」への最初の対応は良かった。

長谷川幸洋「ニュースの深層」
安倍首相の「イスラム国脅迫」への最初の対応は良かった。
人質生還のチャンスはある
現代ビジネス2015年01月23日(金) 長谷川 幸洋

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41855


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安倍首相がイスラエルなど中東歴訪したタイミングで、イスラム国は脅迫をした photo Getty Images

安倍晋三政権が新年早々、激震に見舞われている。イスラム過激派組織の「イスラム国」が日本人2人を拘束し、日本政府に対して身代金2億ドル(約236億円)を72時間以内に支払わなければ2人を殺害する、と脅迫した。この事件をどうみるか。

長期戦に持ち込めるかどうか

事件は単に「日本人もテロリストの標的になりうる」という事実を示しただけではない。明確に政府を対象にした点で、たとえば2013年1月のアルジェリア人質事件とも異なっている。そういう脈絡からは、これからは日本の大使館が標的になってもおかしくない。

安倍政権が難しい対応を迫られているのはもちろんだ。私はそれでも「2人が無事生還するチャンスは残っている」とみる。ただし、それには拙速を避けなければならない。じっくり時間をかける。つまり長期戦に持ち込めるかどうかが鍵になるのではないか。

交渉ごとは、どんな場合でも相手の側から事態を眺めるのが鉄則である。自分の都合ではなく、相手の都合で考えるのだ。そこから突破口が見えてくる。

イスラム国が求めているのは何か。ずばりカネだ。イスラム国は原油の密輸出と人質の身代金を資金源にしている。彼らはたまたま人質を拘束しているのではない。取引して身代金を手に入れるために、組織の「事業」として誘拐事件を展開しているのだ。

解放された外国人元人質の証言によれば、人質たちは全部で数十人ともいわれる。そんな人質は大事な資金源だ。誘拐した後、数週間から数カ月以上も拘束し、家族や出身国の政府に巨額の身代金を要求する。要求に応じれば解放するケースもある。

報道によれば、湯川遥菜さんの場合、初めは家族に10億円の身代金を要求した。後藤健二さんも家族が20億円余の身代金を要求されたという。それが不首尾に終わって今回、政府に1億ドル(約118億円)を要求したのである。

湯川さんは行方不明になって3カ月が経過している。イスラム国の犯人たちは「いずれはカネになる」とみて、2人を「大切に」生かし続けてきた形である。

「72時間で2億ドル」は相手の言い値

今回、もしも72時間でカネが手に入らなかったら、犯人たちは「作戦は不首尾に終わった」と結論付けて、直ちに湯川さんらを殺害するだろうか。誘拐して拘束するには犯行自体はもちろん、その後の監視体制、食事、寝る場所、衣服の提供にいたるまで、それなりに手間とコストがかかっている。

72時間での取引がうまくいかなかったからといって、それまでの「手間とコスト」をパーにしてしまうとは、私には考えにくい。繰り返すが、目的であるカネが手に入らなければ、すべてが水の泡になってしまうのだ。

私は中東滞在の経験はないが、周辺地域の滞在経験は多少ある。たとえばトルコやモロッコ、パキスタンのような国では価格の概念が日本とかなり異なる。定価はあってなきがごとしで、ほとんど値段は売り手と買い手の交渉で決まる。大きな買い物では、売り手が最初に提示する値段が交渉次第で大幅に値引きされるのが普通だ。

今回の「72時間で2億ドル」というのは、相手の言い値である。こちらが少しでも買う素振りをみせれば、交渉は間違いなく始まるだろう。テロリストは最初に希望の倍額程度の身代金を要求し、話がまとまるときは7割引きから9割以上引きという報道もあった。

それは身代金の金額だけでなく、取引の猶予時間についても同じだろう。72時間は言い値である。こちらの出方次第で延長は十分にありうる。「もう少し待てば巨額のカネが入る」と思えば、待たないのは合理的ではない。締め切ってしまえば、そこで取引失敗が確定する。逆に延長したところで、自分が失うものは何もないからだ。

そう考えると、日本政府はまずは72時間の猶予時間をなんとか延長させ、可能なかぎり長期戦に持ち込むことを当面の戦術目標にすべきである。時間を手に入れるのだ。時間を手に入れれば、その間に何が起きるか分からない。

相手のアジトが分かるかもしれないし、新しい情報が入るかもしれない。それらがこちらに有利に働く可能性が出てくる。

取り引きするとも、しないとも言わない

日本政府が相手のコンタクト先がつかめず苦慮している、という報道がある。これはどうだろうか。日本政府とコンタクトしたいのは、身代金を要求しているテロリストたちではないか。接触しなければ、日本政府が払う気になってもカネを受け取りようがない。

だから、相手は必ず日本政府に何らかの形で接触してくるはずだ。すでに接触しているかもしれない。政府がマスコミに接触情報を公開しなかったとしても、政府にしてみれば当然である。そんな情報を公開したところで、事件解決に役立たないどころか、あれこれ推測が広がってノイズになるだけだ。

マスコミの立場で言えば、もちろん、あらゆる情報を報じたい。だが、今回のように生命の危険が明白な場合、私は政府が一定の情報を秘匿したとしても例外的に容認する。人命の重さが報道の重要性を上回る局面はある。

相手が接触してきたとき、どうするか。米国や英国のように「テロリストとは取引しない」と宣言し、しかもそれを公表してしまう選択肢はもちろんある。最初に断固とした姿勢を示して、これ以上、誘拐してもムダと相手に分からせるのだ。米英のように継続的にテロリストたちと戦ってきた国の場合、これは合理的な選択でありうる。

だが「取引するとも、しないとも言わない」というあいまい戦術もある。あいまい戦術は交渉時間を延ばしやすいメリットがある。安倍首相が最初の会見で、テロリストに身代金を支払うとも支払わないとも明言しなかったのは良かった。初めから、姿勢を明確にしてしまえば、相手も早い段階で態度を決めてしまいかねない。

テロリストたちは日本の国民に政府に身代金を支払う圧力を加えるよう求めている。事態は表でも裏でも動いているに違いない。普通の国民が報道で事態の全容を把握するのは不可能である。ここは政府の能力と幸運を信じて、拘束されている2人の無事を祈りたい。

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