【著者に訊け】 澤田瞳子氏 天才画人の生涯描く小説 『若冲』

【著者に訊け】澤田瞳子氏 天才画人の生涯描く小説『若冲』
NEWSポストセブン2015.05.21 07:00

http://www.news-postseven.com/archives/20150521_323152.html

【著者に訊け】澤田瞳子氏/『若冲』/文藝春秋/1600円+税

「若冲」 澤田瞳子著(文藝春秋 1,728円税込)


画像


【内容情報】(出版社より)
奇才の画家・若冲が生涯挑んだものとはーー

緻密すぎる構図や大胆な題材、新たな手法で周囲を圧倒した天才は、底知れぬ悩みを抱え、姿を見せぬ好敵手を憎みながら描き続けた。


若冲
文藝春秋
澤田 瞳子

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 若冲 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



若冲 [ 澤田瞳子 ]
楽天ブックス
澤田瞳子 文藝春秋発行年月:2015年04月22日 予約締切日:2015年04月20日 ページ数:3


楽天市場 by 若冲 [ 澤田瞳子 ] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


発売日: 2015年04月22日頃
著者/編集: 澤田瞳子
出版社: 文藝春秋
サイズ: 単行本
ページ数: 358p
ISBNコード: 9784163902494

【内容情報】
「世に二つとない絵を描く」画人、その名は伊藤若冲ー池大雅、円山応挙、与謝蕪村、谷文晁、市川君圭…絵師たちの運命が京の都で交錯する。著者渾身!至高の芸術小説。

【目次】
鳴鶴
芭蕉の夢
栗ふたつ
つくも神
雨月
まだら蓮
鳥獣楽土
日隠れ

【著者情報】
澤田瞳子(サワダトウコ)
1977年、京都府生まれ。同志社大学文学部文化史学専攻卒業、同大学院博士課程前期修了。時代小説のアンソロジー編纂などを行い、2010年、『孤鷹の天』で小説家デビュー。11年、同作で第十七回中山義秀文学賞を最年少受賞。12年、『満つる月の如し仏師・定朝』で第二回本屋が選ぶ時代小説大賞、13年、第三十二回新田次郎文学賞受賞

電子書籍


若冲 (文春e-book)
文藝春秋
2015-04-24
澤田瞳子

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 若冲 (文春e-book) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



若冲【電子書籍】[ 澤田瞳子 ]
楽天Kobo電子書籍ストア
奇才の画家・若冲が生涯挑んだものとはーー緻密すぎる構図や大胆な題材、新たな手法で周囲を圧倒した天才は


楽天市場 by 若冲【電子書籍】[ 澤田瞳子 ] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


 幸せな絵では決してない。しかしなぜか見入らずにいられない奇想の画家・伊藤若冲(じゃくちゅう)の作品から、澤田瞳子著『若冲』は生まれた。

「18世紀の京都で円山応挙と並ぶ人気を集めた若冲は、特に2000年の大回顧展以降、命の喜びを謳うとかでポジティブに再評価され、一気にブレイクした。でもあの筆致や色彩感覚といい、本当にそれだけ? そんなに明るい絵? って、ずっと違和感があったんですね。そこで彼の絵や史実の間を物語で繋いだのがこの小説で、『どこまでが事実?』って、よく聞かれます(笑い)」

 京の台所・錦小路。かつての錦高倉市場で青物問屋枡源を営む家の長男に若冲こと4代目源左衛門は生まれ、人気絵師として没するまでの84年の生涯を、本書では8編の連作に切り取る。

 彼が絵に没頭した背景には妻〈お三輪〉の自死やその弟で後に絵師・市川君圭となる〈弁蔵〉との確執があり、自責の念から壮絶さを増す画業を妾腹の妹〈お志乃〉は黙々と支えた……。と、〈 〉内は氏の創作だが、時に優れた嘘は事実以上に真実に肉薄することがある。

「生涯独身の若冲に自殺した妻がいて、その弟が市川君圭って、若冲ファンには怒られそうですけど(笑い)。ただ当時は過去帳にない人がいてもおかしくないし、元々この物語は若冲の晩年の様子を書いた当時の雑文に、『石峰寺の隠居所に尼の姿の妹と男の子がいた』という記述を見つけたことに始まってます。

 40で隠居した彼の身辺を早世した三男の嫁が世話したという説もある一方、この男の子が誰かはわからない。そこで先代の庶子・志乃と君圭の息子〈晋蔵〉が若冲と仲良く暮らす光景が浮かんだんです」

 2010年の『孤鷹の天』以来、歴史小説に新風を吹き込む氏は京都出身。大学院では古代史を学び、「歴史に関わり続けたくて小説を書き始めた」彼女は、とかく美化されがちな若冲の生涯を、1人の人間として描き直す。

「この本自体、表紙の『紫陽花双鶏図』を見てジャケ買いする読者がいる一方、緻密すぎて気持ちが悪いと言う人もいる。なぜ良くも悪くも彼の絵に心が騒ぐかといえば、私たちの中にも似たような懊悩や葛藤があるからだと思うんです。

 と同時に私は、円山応挙や池大雅、与謝蕪村や谷文晁といった絵師が活躍し、裏松光世ら禁中の尊皇派が宝暦事件で追放された世紀の京都を描きたかった。実は京都の近代化は若冲たちが生きた時代に始まっているとも言え、たとえば宝暦事件が後の尊王攘夷運動に繋がり、洛中の大半を焼いた天明の大火(1788年)が今の京都を作った。つまり当時は現代に続くゼロ地点だったわけです」

 第1話「鳴鶴」は『鳴鶴図』、第2話「芭蕉の夢」は金閣寺の障壁画『月夜芭蕉図』に因み、『動植綵絵』『果蔬涅槃図』など数々の傑作が描かれた背景が綴られる。また〈大盈は冲しきが若きも、その用は窮まらず〉という老子の一節から若冲と名付けた相国寺院主・大典など、周辺も豪華だ。

 父の死後、23歳で家督を継いだ源左衛門には2人の弟がおり、主に彼らが店を切り回していたが、ある時、彼は隠居を宣言し、枡源は弁蔵に志乃を沿わせて譲ると言い出したからさあ大変。

 特に枡源に姉を殺されたと恨む弁蔵は猛反発し、密かに彼を慕う志乃は〈兄さんにとって絵は、お三輪はんを悼む手立てなんどす〉と言って兄の絵を見せた。だが彼の怒りは収まらず、〈こんな絵ぐらい、わしかて簡単に真似してみせるわい〉と言って、姿を消すのだ。

 そして4年後。隠居後は若冲の号で一層画業に励む彼は、折しも大雅から蟄居中の元左少弁・裏松光世を紹介され、自作に瓜二つの『雪中鴛鴦図』を見せられる。作者は近江醒ヶ井出身の偽物絵師・市川君圭…あの弁蔵に違いなかった。

 迫り来る弁蔵の影。その中で独自の画風を追究した若冲の画業には2年の空白があり、その間、彼が奔走した市場の存続問題を描く4話「つくも神」が面白い。

「実はこの騒動がある論文で紹介された2008年以降、それまでオタクとされてきた若冲は錦を守るために断固戦った熱い男だと、評価が独り歩きしているんですね。ただその元の史料を書いたのは枡源の子孫で親族を悪く書かないだろうし、寧ろ錦を救ったのは江戸勘定所役人・中井清太夫とも読める。若冲も元当主として関与したでしょうが、もっと史料をよく読みこんでよ、と思いながら書きました」

 騒動は錦高倉四町に突然「市止め」が通達されたことに始まる。奉行所が再提出を求める許可証はとうに火事で燃え、町役らは冥加銀の値上げを申し出るが、賄賂と受け取られて処分は長引いてしまう。その背後では跡地の利権を狙う五条問屋町の有力者、明石屋半次郎が糸を引き、運悪く彼が志乃の夫だった。そして泣き帰った妹を迎えた矢先、若冲は知己の医師から上京中の中井を紹介されるのだ。

「組合で存続を訴えるより、市場に作物を納める農家に訴えさせた方がいい等と知恵を授けた中井は、翌年御所の大がかりな不正経理を摘発している。要は禁裏御用を務める五条側の動きを内偵するために、若冲たちに肩入れした可能性がある。

 その有能さから田沼意次の下で出世しながら寛政の改革で失脚した中井もまた当時の世相を体現した1人。その中でどの流派にも属さず、日本の美術史上に屹立した徒花が、若冲でした」

 若冲は融通無碍な中井や利権を争う人々の姿を『付喪神』に描く一方、絵に囚われてもがき続ける自身や弁蔵の闇を思った。やがて憎悪で結ばれたその関係が、どこか共犯にも似た関係に転じ、真贋をめぐって今も意見の分かれる『鳥獣花木図屏風』や「枡目描き」という斬新な手法の謎解きにまで展開する物語はスリリングで見事という他ない。

「彼が何を絵に託したかは本人にしかわかりませんが、人の世の無常を知る中井にはその〈不滅の輝き〉が夢、志乃には兄の人生に映るように、絵は観る人が観たいように観ればいいんです。まして真贋などどうでもよく、事実はどうあれそこにあり続ける彼の絵が、唯一の真実だと私は思います」

〈世が推移したとて、絵は決して姿を変じませぬ〉とある。現代的な市場価値や解釈を超えた地点に、人の世の哀しみや苦しみを写しとった若冲の絵は存在し、それらを「もっと緩やかに」感じるために、彼や大雅や応挙や蕪村らの横顔を生き生きと描くこの小説はある。

【著者プロフィール】
澤田瞳子(さわだ・とうこ):1977年京都生まれ。同志社大学文学部文化史学専攻卒、同大学院博士課程前期修了。2010年『孤鷹の天』でデビューし、中山義秀文学賞を最年少受賞。2012年の『満つる月の如し』で本屋が選ぶ時代小説大賞と新田次郎文学賞。著書は他に『日輪の賦』『泣くな道真』等。「父は岐阜、母(作家・澤田ふじ子氏)は愛知出身の、いわば在京二代目。〈先進と保守〉が同居する京都の本音も書いていますが、他の町に住みたいとは思わないですね」。167cm、B型。

(構成/橋本紀子)

※週刊ポスト2015年5月29日号

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0