【書評】 戦場体験者 沈黙の記録 保阪 正康 著 (筑摩書房・2052円)

【書評】
戦場体験者 沈黙の記録 保阪 正康 著 (筑摩書房・2052円)
東京新聞2015年9月13日



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◆加害側の心の懊悩に迫る

「戦場体験者 沈黙の記録」 保阪正康著(筑摩書房 2,052円税込)


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戦場体験者 沈黙の記録 (単行本)
筑摩書房
保阪 正康

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発売日: 2015年07月23日頃
著者/編集: 保阪正康
出版社: 筑摩書房
サイズ: 単行本
ページ数: 252p
ISBNコード: 9784480818423

【内容情報】
この国の310万人余が死んだ。生きのびた人たちの痛みとは。40年間におよぶ聞取り・史料調査の集大成!40数年間に延べ4000人から聞取り調査を行なってきた昭和史の探究者が、戦後70年の節目に渾身の力を込めて!

【目次】
第1章 『きけわだつみのこえ』と戦後社会
第2章 日中戦争の実態を伝える
第3章 元戦犯たちの苦悩
第4章 軍隊と性の病理
第5章 衛生兵の見た南方戦線
第6章 個人が残した記録
補章 兵士の戦場体験をいかに聞くか

【著者情報】
保阪正康(ホサカマサヤス)
評論家・ノンフィクション作家。1939年札幌市生まれ。同志社大学文学部卒業後、出版社勤務などを経て著述活動に入る。日本近現代史(とくに昭和史)の実証的研究、医学・医療の分野を検証する作品を発表している。2004年、個人誌『昭和史講座』の刊行で、第52回菊池寛賞受賞

[評者]吉田司=ノンフィクション作家

 悲惨な戦争体験を語り継ぐことが平和を守る道だとよく言われるが、その<悲惨>が軍国主義で苦汁をなめた日本人の被害者体験だけを指すなら、それは独りよがりの偽善的平和だ。中国やアジアへのあの侵略戦争で日本人兵士は何をしたのかという加害者体験が語られなければ、世界は日本の戦争責任を追及し続けるだろう。そして日本の戦後史は、まさにその被害者の声のみ多くして、加害者は寂として声無しの流れだったと言っていい。

 その原因のひとつに、前線で残虐行為(殺人・強姦(ごうかん)・略奪など)をして敗戦となり、生きて日本に帰還した元兵士(戦場体験者)たちの<沈黙>がある。戦争の残虐現場の証言者たる彼らが口を閉ざしたことで、侵略・加害の証拠は「存在しない」ことになり、「自虐史観だ」と叫ぶ歴史修正主義の台頭を招いた。本書はその日本人の<戦後責任=沈黙>の壁に立ち向かい、元兵士の心の懊悩(おうのう)を聞き取り続けた労作だ。その数、四十年余で延べ四千人。

 沈黙の謎を解く鍵は「戦友会」だと言う。ピーク時には六千もの団体があり、そこではまだ旧陸海軍の階級秩序が生きていて、上官は戦場体験を外部(市民社会)に漏らすな、と暗黙の強要をおこなった。それに己の残虐行為を告白したら、幸せな家庭生活は破滅する。<沈黙>は戦後の平和を生き抜くための「知恵」だった…とある。

 このほか、「南京虐殺はなかった」と言うのは歴史修正主義の一派、慰安婦問題は「性と軍隊」の視点から議論すべし、慰安所設置は部隊長の決断…など、本書には注目すべき話が満載。現在の安倍政権についても「『権力』が公然と歴史に口を挟んでくる」。このままでは「日本は軍事主導の非歴史的想念に振りまわされ、進むべき道をまちがえてしまう」と批判する。

 本書は安保法制反対のデモに行く前に読むか、しながら読むか。どちらでもいいから「読むべし!」の一冊だ。

<ほさか・まさやす> 評論家。著書『安倍首相の「歴史観」を問う』など。

◆もう1冊 
 山田朗著『兵士たちの戦場』(岩波書店)。日中戦争・太平洋戦争の経過をたどりながら、兵士たちの体験記をもとに戦場の実態を描く。





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体験と記憶の歴史化 戦争の経験を問う 山田朗 岩波書店発行年月:2015年08月 ページ数:237,


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