【池上彰が斬る!】 「朝日より読売、産経が問題」 安保法制報道に見るメディアの暴走とは?

池上彰が斬る!「朝日より読売、産経が問題」
安保法制報道に見るメディアの暴走とは?

中村 陽子 :東洋経済 編集局記者 2015年09月06日

http://toyokeizai.net/articles/-/82234


画像
朝日新聞が大きく揺れた、この1年を振り返る。池上彰氏に話を聞いた(撮影 : 尾形文繁)

従軍慰安婦と福島第一原発事故に関する一連の誤報、著者のコラム掲載拒否騒動、続く社長の引責辞任と、朝日新聞が大きく揺れた1年。折しも国会では安全保障法制審議がヤマ場を迎え、その報じ方に各紙の違いがより先鋭化している。『池上彰に聞く どうなってるの? ニッポンの新聞』著者の池上彰氏に聞く。

朝日新聞の誤報問題から1年、新聞は変わったのか

──まず朝日問題ですが、この1年を振り返ってどうお感じですか?

過去の従軍慰安婦報道について訂正はしましたがその訂正が不十分だったし、謝罪をしなかった。謝罪しなかったことを批判したらコラム掲載拒否を伝えられ、今度は社内が大騒ぎになった。それを機に体質を含めた朝日の問題が一気に噴き出した。一つひとつそれらを検証し、自分たちを変えようと努力はしました。

朝日的な物の見方への異論・批判に紙面を開くフォーラム機能も充実させました。朝日の論調に真っ向から反対する人にも話を聞くようになりましたね。安保法制論議でも賛成・反対両方の意見を載せている。朝日の報道に物申すというような、有識者による検討会議もできました。朝日自身でだいぶ自浄作用を働かせたんじゃないかと思いますね。

──他紙への波及効果は?

たとえば朝日は訂正欄をきちんと設けるようになった。単に「ここが誤りでした、訂正します」じゃなくて、たとえば資料の確認が不十分だったとか、その経緯まで説明しています。最近は他紙でも、きちんと訂正したうえで、「お詫びします」の文字が入るようになりましたね。

読売新聞や産経新聞は、フォーラム機能で両論を載せることは今も絶対にしません。が、読売では特ダネを出す際にそれを客観的に検討する委員会が社内にできた。誤報を防ぐ仕組みを作ったという点で、朝日を見てわがふり直した、ってことでしょうね。そういう意味では一定のいい影響を与えたんでしょう。

──読売、産経が“朝日たたき”と並行して展開した販促キャンペーンに、池上さんは冷ややかですね。


画像
池上 彰(いけがみ あきら)/1950年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。記者やキャスターを務め2005年に退社しフリーへ。東京工業大学教授、信州大学・愛知学院大学特任教授など務める。『伝える力』『そうだったのか!現代史』『おとなの教養』ほか著書多数。テレビ番組での“池上解説”が人気

はい、そうですね。一連の騒動で朝日は部数減らしましたけど、読売はそれ以上に減らしました。朝日をたたけば読者が流れると思ったら流れてこなかった。要は自分の金儲けのためだろって見透かされた。読者はますます引きますね。新聞界全体への信用が失われたってことですよ。

それに誤報という事実と、もともとの朝日の論調を一緒くたにして攻撃したのも乱暴ですよね。従軍慰安婦の「吉田証言」を長く訂正しなかったという問題と、慰安婦問題そのものとはまったく別の話ですから。

──安保法制に関する報道では完全に二極化していますね。

7月に衆議院特別委員会で採決された際、これを「強行採決」と報じた新聞と「与党単独採決」とした新聞、その夜国会前に6万人が集結した抗議デモを大きく扱った新聞と無視した新聞があるわけでしょ。各論調とは別に、あれだけの人が集まった事実は報道する価値がある。産経は、あれを安倍晋三さんに対するヘイトスピーチだって言ってますけど(笑)。

安保法制賛成の新聞は反対意見をほとんど取り上げない。そこが反対派の新聞と大きく違う点です。読売は反対の議論を載せません。そうなると、これがはたしてきちんとした報道なのかってことになる。

世論調査は誘導尋問調査になっている

読売でとりわけ驚いたのは、安保法制への賛否を問う世論調査の質問文です。「日本の平和と安全を確保し、国際社会への貢献を強化するために、(中略)こうした法律の整備に賛成か反対か」って、これ、明らかに誘導ですよね。こんな聞き方されたら、それはいいことかもって思わされるような質問の仕方です。

──世論調査については、本の中でも特に問題視されてます。

たとえば集団的自衛権を認めるか否かを調査したとき、読売は賛成か反対かだけじゃなく、「必要最小限ならいい」という選択肢を入れたんですね。必要最小限っていう言葉自体、そもそもいいことを前提としての聞き方でしょう。そりゃ何だろうと必要最小限はいいですよね。賛成・反対の間に必要最小限を置いて、賛成と足し合わせた答えが多くなるよう誘導しているんですよ。以前はまだ客観的な聞き方をしてたはずなんですけど、去年からの読売の世論調査は明らかな誘導尋問調査ですね。

──ところでNHKは、6万人デモをほんの一瞬しか放映しませんでした。

“空気”を読んでるんでしょ。あまり大きく扱わないほうがいいって、どこかの段階で誰かが判断してるんでしょう。一応報じたってことは、これは取材すべきと思った記者が取材して書いて、デスクが直して原稿にした。だけどそれを番組でどう扱うかは各編集責任者の判断ですから。

NHKの報道は公正中立か?

──現場は取材したにせよ、最終的にほとんど報じなかったというのは、放送法で課された公正中立どころか、偏向してはいませんか?

いや、偏向っていうか、明らかにおかしいでしょ。おかしいですよ、そりゃ(笑)。それがテレビに課された「事実を曲げない」の範囲内かどうかといえば、事実は一応報じてるわけだし、いい悪いではなく、事実を曲げてるという批判は難しいですよね。まあ、私はもっと大きく報道すべきだと思いますけど。

──憲法学者らを招いた衆院特別委員会の参考人質疑もNHKは中継ナシでした。

NHKには中継する基準があって、それを満たすとわかったのが当日の朝だったから間に合わなかった、って言ってる。けどそれは違うだろう、そんなわけないだろうって思いますよ。急いでやりゃいいんです。

きっとどこかで、わざわざやらなくてもいいだろうと、空気を読んだ人間がいるんじゃないかな。“忖度(そんたく)”ですよね。籾井勝人会長自ら、報道するなと言ったら大問題だし、彼は言わないですよ、わからないから。「会長はきっとこう思うであろう」と忖度するヤツがいて、下に向かって「慎重に」と放送総局長なり中間管理職が言うんでしょ。

──NHKは政権に対し見て見ぬふり、サボりジャーナリズムじゃないか、って批判もあります。


画像
『池上彰に聞く どうなってるの? ニッポンの新聞』

「池上彰に聞くどうなってるの? ニッポンの新聞」 池上彰著(東京堂出版 1,404円税込)


画像


出版社からのコメント
ここのところ、「新聞」の周辺が騒がしいようです。
朝日新聞の誤報問題。
他紙による激しいバッシング。
新聞の「二極化」。
止まらぬ部数減少。
いったい、ニッポンの新聞に何が起こっているのでしょうか。
そもそもネットの時代、新聞はもういらないのでは……?

本書は、ジャーナリストであり「新聞好き人間」を自認する池上彰さんが、新聞をめぐるさまざまな疑問や
出来事をわかりやすく解説しながら、問題の本質に迫ります。
たとえば、
「朝日新聞の問題ってなんだったのだろう」
「どうして誤報が起こるのか」
「宗教・差別用語・スポンサー・皇室……新聞にタブーってあるの?」
「新聞の週刊誌広告見出しが『伏字(黒塗り)』になる理由は?」
「新聞によって報じ方・取り上げ方が全然違うのはなぜ?」
さらには
「メディアに政府が介入できるのか」
という問題まで、過去から現在までの事例をひもときながら、新聞社の体質や記者独特の陥りがちなワナまで、
幅広く解説します。
最近「沖縄二紙をつぶせ」という声まであがりましたが、新聞が果たす役割について、改めて考えるときでは
ないでしょうか。

新聞を読む人もあまり読まない人も、新聞好きの人も不信感をもつ人も、さらには新聞をつくっている
現場の人たちにも、ぜひ手にとっていただき、「新聞の今とこれから」を考えるきっかけとなればと思います。


池上彰に聞く どうなってるの? ニッポンの新聞
東京堂出版
池上 彰

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 池上彰に聞く どうなってるの? ニッポンの新聞 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



池上彰に聞くどうなってるの?ニッポンの新聞 [ 池上彰 ]
楽天ブックス
池上彰 東京堂出版発行年月:2015年07月03日 ページ数:189p サイズ:単行本 ISBN:9


楽天市場 by 池上彰に聞くどうなってるの?ニッポンの新聞 [ 池上彰 ] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


発売日: 2015年07月03日頃
著者/編集: 池上彰
出版社: 東京堂出版
サイズ: 単行本
ページ数: 189p
ISBNコード: 9784490209068

内容紹介
新聞が危機に瀕している! ネットに押されて部数は減少。そこに起こった「朝日新聞問題」。
そして、ライバル紙による過熱する朝日叩き―。「それでも、新聞は必要なのです」と池上彰さんは断言します。
その理由とは? 新聞をめぐる、過去から現在までの出来事をわかりやすく解説しながら、日本の新聞界の
「病理」に鋭く切り込みます。「新聞ファン」を自認する池上さんが、新聞の過去から現在、未来までをとことん
語ります。

なるほどなるほど。いやそのとおりです。まあがっかりですよね。

今ニュースをネットで拾う人が増えてますが、それはどこかの新聞かテレビの報道をネットで見てる場合が多い。安保法制でも、読売や産経が報じる事実自体、正しいかどうか疑問すら起きるわけです、反対論を載せないという点で。論調は別にして、事実は客観的であるはずという信頼感がなくなってますよね。ファクト自体がメディアによって全然違っちゃってる。今自分が目にしているのは、世の中のほんの一部の断片なんだという自覚が必要ですね。






池上彰・森達也のこれだけは知っておきたいマスコミの大問題
現代書館
池上彰・森達也

ユーザレビュー:

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 池上彰・森達也のこれだけは知っておきたいマスコミの大問題 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

おとなの教養 [ 池上彰 ]
楽天ブックス
私たちはどこから来て、どこへ行くのか? NHK出版新書 池上彰 NHK出版発行年月:2014年04月

楽天市場 by おとなの教養 [ 池上彰 ] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

池上彰のニュース そうだったのか!! 1 日本人なら知っておきたい「実はみんな知らない日本」
SBクリエイティブ
池上彰+「池上彰のニュースそうだったのか!!」スタッフ

ユーザレビュー:

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 池上彰のニュース そうだったのか!! 1 日本人なら知っておきたい「実はみんな知らない日本」 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル