【注目の人 直撃インタビュー】  春名幹男・早大客員教授「米軍が守ってくれるなんて幻想」

注目の人 直撃インタビュー
春名幹男・早大客員教授「米軍が守ってくれるなんて幻想」
日刊ゲンダイ2015年12月14日

http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/171390


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春名幹男氏(C)日刊ゲンダイ

安倍首相自身が同盟の真相を知らない

 つい最近、来年度の米軍基地への思いやり予算がちっとも減額されないことが分かったが、驚くのはまだ早い。スッタモンダした集団的自衛権行使の大前提は「イザというときは米軍が日本を守ってくれる」だったのに、これがウソっぱちだったのである。衝撃の書、「仮面の日米同盟」(文春新書)は膨大な資料、文献から、国民はもちろん、恐らく安倍首相も誤解している日米同盟の真相を暴いたものだ。ボーン・上田賞受賞のジャーナリストで早大客員教授の春名幹男氏がすべてを語る――。

「仮面の日米同盟」(文春新書)

「仮面の日米同盟 米外交機密文書が明かす真実」(文春新書) 春名幹男著(文藝春秋 864円税込)


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【内容情報】(出版社より)
「アメリカが日本を守ってくれる」幻想を打ち砕く、衝撃の米外交機密文書の数々

日本領海・領空に軍事的侵入を繰り返す中国。核ミサイル小型化を進める北朝鮮……でも、日米安保があるからアメリカが守ってくれる。日米同盟をより強化するために、安保法制を整備しなくてはならない……これが安倍政権の論理である。
だが、それは「美しい誤解」にすぎない、と著者は主張する。なぜなら新ガイドライン(今年4月改訂)の原文や、著者が大量に発掘した米外交機密文書によると、日本が武力攻撃を受けた場合、アメリカが主体的に血を流す気などさらさらないことがわかるからだ。
たとえば、
1新ガイドラインの日本語訳には、日本が武力攻撃を受けた場合、「米軍は(中略)打撃力の使用を伴う作戦を実施することができる」とある。最後の「できる」の部分は、英語の原文では「may」となっており、「してもよい」「する可能性がある」のレベル。この他にも日本政府は作為的かつ重大な「誤訳」を数多く積み重ね、あたかも米軍が率先して日本防衛にあたってくれるかのようなムードを広めている。
2尖閣問題で、アメリカは中立の立場をとれる逃げ道を用意していた。米国国務省は領土紛争に巻き込まれることを恐れ、1971年春にquit claimという法理論の適用を決めた。日本外務省にとって極めて重大な情報だが、その事実を全く認識していなかった。
3フォード政権文書にも「在日米軍は日本の防衛に直接関与しない」と明記されている。
4沖縄「普天間移転は必要なし」が米国務省の基本的立場。そもそも返還交渉の時から、米側は日本を手玉に取ってきた。
……こうした驚愕の機密文書がこれでもかと列挙される。
安倍政権はもちろん、日米関係にも激震が走る話題作だ。


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文藝春秋
春名 幹男

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米外交機密文書が明かす真実 文春新書 春名幹男 文藝春秋発行年月:2015年11月20日 予約締切日


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基本情報
発売日: 2015年11月20日頃
著者/編集: 春名幹男
出版社: 文藝春秋
サイズ: 新書
ページ数: 269p
ISBNコード: 9784166610532

【内容情報】
「アメリカが日本を守ってくれる」それは日本人の思い込みにすぎない。膨大な米外交機密文書の数々は日米安保よりも自国の利益を優先する大国のエゴを浮き彫りにしている。安保法制を根底から揺るがす一冊!

【目次】
はじめにーアメリカは頼れる同盟国か?
第1章 アメリカは日本を守ってくれるか
第2章 米機密文書は語る
第3章 アメリカ依存を誘導する戦略
第4章 裏切りの沖縄返還
第5章 「繊維」の欺きと報復の「ニクソン・ショック」
第6章 米中の狭間で翻弄される日本
第7章 尖閣諸島問題におけるアメリカの本音
結論に代えてー同盟の疲労

【著者情報】
春名幹男(ハルナミキオ)
ジャーナリスト・早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース客員教授。1946年、京都市生まれ。大阪外国語大学(現・大阪大学)卒業後、共同通信社入社。ニューヨーク特派員、ワシントン支局長、特別編集委員などを歴任。在米報道歴12年。1994年ボーン・上田記念国際記者賞、2004年日本記者クラブ賞受賞。2007年から10年まで名古屋大学教授を務めたほか、外務省「いわゆる『密約』問題に関する有識者委員会」委員も歴任。専門はアメリカ政治、情報機関、安全保障

電子書籍

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「日米安保条約があるから、アメリカは日本を守ってくれる」は幻想だった! 集団的自衛権の議論にも一石を


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――本の帯には〈「アメリカが日本を守ってくれる」は幻想だ!〉とあります。

 そうです。幻想に基づいて、いろいろな政策が行われている。集団的自衛権の行使容認もそうだし、思いやり予算もそうです。すべてを見直すような議論を始めなければいけません。

――米軍は日本のために血を流してくれる。だから基地の提供は当然だし思いやり予算も必要。集団的自衛権で助け合うことも大事で、そうすれば日米同盟が深化し、抑止力になる。安倍首相は何度もこう言っていますが、ウソであると?

 政治家は勉強不足です。安倍首相自身も分かっていないと思います。

――米国は日本を守ってくれないんですか?

 自衛隊と米軍の役割分担を定めた日米ガイドラインは改訂を重ねて、今は3版目です。最初は1978年。ここには「日本は小規模な侵略を独力で排除する。独力で排除することが困難な場合には、米国の協力を待って、これを排除する」とあり、「陸上自衛隊および米陸上部隊は陸上作戦を共同して実施する」と明確に記されています。ところが、97年の第2版では「日本は日本に対する武力攻撃に即応して主体的に行動し、極力早期にこれを排除する。その際、米国は日本に対して適切に協力する」という文言に変わっているのです。2015年版は「米国は日本と緊密に調整し、適切な支援を行う。米軍は自衛隊を支援しおよび補完する」と書いてあります。つまり、97年以降、米軍の任務は「サブ」に変わった。支援し、補完するだけで、主体的に防衛するのは自衛隊であるわけです。

■官僚が作為的翻訳で“協力”

――「適切な支援」という言葉がまた曖昧ですね。

 適切かどうかは米軍が決める。情報提供だけでも支援になる。血を流すとは限らない。しかも、英語の原文に当たって驚きました。ガイドラインは英語で交渉し、英語で文章を作る。それを官僚が翻訳するのですが、その際、作為的に米軍が日本の防衛に積極的に関与するかのような翻訳をしているのです。

――情報操作ですね。

 例えば「主体的」ですが、英文にはprimary responsibilityとある。「主な責任」という意味で、主体的とはニュアンスが違う。「支援し補完する」も英文はsupplement。栄養補助食品に使う言葉で、補足する、追加するという意味です。補完するであれば、complementがふさわしくて、78年版ではcomplementが使われていた。米軍支援のニュアンスは明らかに後退しているのです。さらに15年版には「米軍は自衛隊を支援し、補完するため、打撃力の使用を伴う作戦を実施することができる」という日本語がありました。「できる」というからにはcanだと思ったら原文はmayだった。してもよい、するかもしれない、という意味ですよ。共同作戦も通常はjoint operationだが、原文はbilateral operation。「2国の作戦」という意味で、これを共同と訳すには無理がある。

――官僚が必死になって、米軍は日本を守ってくれるという幻想を振りまいているんですか?

 外務省はなぜ、こんな訳をしたのか。安保法制を可決しやすくするためなのか、それとも安倍首相の意図なのか。

――いずれにしても、米国は日本を守ることについて、表現を後退させているのはハッキリ分かる。これはなぜですか。

 実は長年の取材、研究を通じて、日米安保条約の真相を物語る幾つかの機密文書を発見しました。一つは1971年、アレクシス・ジョンソン国務次官が一時的に長官代行としてニクソン大統領に提出したメモです。そこにはハッキリ、こう書いてあったのです。

〈在日米軍は日本本土を防衛するために日本に駐留しているわけではなく(それは日本自身の責任である)、韓国、台湾、および東南アジアの戦略的防衛のために駐留している。在日および在沖縄米軍基地はほとんどすべてが米軍の兵站の目的のためにあり、戦略的な広い意味においてのみ、日本防衛に努める〉


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安倍首相(左)とオバマ米大統領(C)日刊ゲンダイ

米軍協力よりもまずは専守防衛だ

――そのものズバリ、戦略的な広域防衛の兵站であると?

 似たようなメモは他にもありました。

――ちょっと待ってください。そういうことを外務官僚は知っていながら隠しているわけですか?

 逐一、過去の文書やメモをチェックしているわけではないし、米国もあえて通告はしない。しかし、米国はこうやって、対日政策を戦略的によく考えている。日本の防衛官僚もガイドラインの文言が変わっていることは知っている。しかし、米側の発言があるわけではないので、政治家に「変わりましたよ」とは言わない。日本のメディアも原文に当たらないから、真相が国民に伝わらない。こうやって仮面の同盟の真相が覆い隠されてきたのです。

――でも、尖閣は日本の施政下だから日米安保条約の適用範囲内なんですよね? オバマ大統領も言っていた。

 尖閣主権の経緯について米国はホームページで何も触れていません。都合の悪いことには関わりたくないのが本音でしょうが、政府もメディアもその本質に切り込まず、政府は『安保条約の適用対象だと言ってくれ』という形式を整えることにきゅうきゅうとしている。メディアも大統領がそう言えば、あたかも米軍が尖閣を守るかのような報道をする。幻想で日本の防衛政策が決められているのは極めて不健康なことです。

――安倍首相は閉会中審査で、自衛隊の南シナ海派遣にも踏み込んでいました。

 米国の航行の自由作戦は形だけで完全に腰が引けています。その消極さが米国内でも批判されているほどです。あの海域をイージス艦が通ってもソナーを海に入れるわけでもないし、火器管制レーダーのスイッチも入れてない。ヘリも飛ばしていません。そんなところに自衛隊が出ていく余地なんてありません。

――それなのに、安保関連法案が通ったのをいいことに、安倍首相だけが勇ましい。

 米国の狙いをきちんと分析してないで言っているのですから、危険ですよ。

――結局、日本は日米安保の真相、米国の本音を知らないまま、自衛隊を出す法律だけ作った。そういうことになりますか?

 そうです。これは自衛隊を白紙委任で米国に差し出すようなものです。具体的、緊急の課題があって決めたわけではないし、どのような戦争であれば、集団的自衛権を行使して協力するのか、という議論もなされていない。日本の安全保障が百八十度変わる話なのに、閣議決定から法案成立まで1年ちょっとというのは、あまりにも乱暴な話です。

――大体、米国が日本を守ってくれるかどうか分からないのであれば、米軍にくっついて、地球の裏側まで行くより専守防衛こそ固めるべきじゃないですか?

その通りです。しかし、それを正面に据えた議論が国会でもなされなかった。集団的自衛権を行使するのであれば、自衛隊の仕事が増える。その分、日本を守る要員が削られてしまう。

――それでなくてもパリの同時テロ以降、トルコのロシア機撃墜もあり、世界は一気にきな臭くなっています。

 イスラム国との戦争は当面、終わらない。終わる可能性が予見できない。トルコのロシア機撃墜でロシア機が領空侵犯したのはたった17秒ですよ。トルコはロシア機の領空侵犯を待っていて、その機会を逃さず撃墜したことになる。それほど世界は血なまぐさいのです。それなのに日本は自衛隊は出すけど、そうした国際情勢を分析、検討するインテリジェンスの体制が整っていない。ますます、危なっかしいのです。

▽はるな・みきお 大阪外大卒。共同通信でワシントン支局長、特別編集委員など歴任。「秘密のファイル CIAの対日工作」など著書多数。現在は早大客員教授。

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