石田衣良氏 「感謝の言葉で洗脳し正義に酔う感じは気持ち悪い」

石田衣良氏「感謝の言葉で洗脳し正義に酔う感じは気持ち悪い」
NEWSポストセブン2016.01.01 16:00

http://www.news-postseven.com/archives/20160101_373565.html?PAGE=1


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【「社会の無関心化が進んでいる」と石田衣良さん】


 NEWSポストセブン恒例の直木賞作家・石田衣良氏の年頭インタビューをお届けする。2015年、社会のタコ壺化が進んでいる。(取材・構成=フリーライター・神田憲行)

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 昨年、文学界から出て社会現象にまでなったのは、又吉直樹さんの「火花」が芥川賞を獲り、260万部というベストセラーになったことでしょう。何年かに一度、人々の間に純文学を読みたいという欲求が溜まるときがあって、そのマグマのガスに火がついたと思います。もともと又吉さんが芸人で読者家というのも広まっていましたから。

 又吉さんはリリー・フランキーさんみたいに「当て逃げ」じゃないので(著書「東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン~」が大ベストセラーになった)、たんたんとこれからも書いていかれるんじゃないですかね。(又吉さんの多額の印税も話題に)私も経験ありますが、「あ、なるほど」という感じであまり現実感がないんですよ。すぐには大きな買い物はしなかったですね。

 又吉さんは来年が大変じゃないかなあ。今年の印税に対する税金だけでなく、再来年分も予定納税しろっていわれるので、来年は2年分の税金を払わされることになります。

 それにしても芥川賞を同時受賞した羽田圭介さんとキャラクターが交替して面白いね。又吉さんが文化人寄りになって、羽田さんが芸人寄りになってさ。最近の芥川賞受賞者はキャラクターの濃い人が出ていますけれど、みんなここで名前を覚えて貰わないと一生のチャンスを棒にふりかねないので、受賞の挨拶でも編集者から「ちょっと一発、勝負かけてください」みたいにプレッシャーかけられてるみたいですね。

 あと水木しげるさんや野坂昭如さんのような戦中派の方が亡くなられました。野坂さんとお会いしたことはないですが、もう「火垂るの墓」のような作品は出てこないんだろうなあ。実体験がないと書けないですからね。これからは実体験を二次体験したような、エキスを抽出したものが増えるんでしょうねえ。またそういう人工甘味料みたいな作品の方が受けたりしますが……。

 ただ強烈な実体験さえあれば書けるか、というとそうでもない。川端康成は戦争中に鹿屋に行ってるんですが(注・特攻隊の基地があったところ)、そこで特攻隊の兵士たちと食事して、泣きながら「君たちのことをいずれ書くから」と約束しているんですが、筆が持てなかったんだよね。そういうものは本当は作品化するのが難しいのかも知れない。そういう難しさをすっとばして参考書を読んでさらっと書けちゃったものの方が世の中に受けたりする。フェイクでない第二次世界大戦の体験をどう捉えていくのか、みんなの課題でしょうね。

 私も昨年12月に新刊「逆島断雄と進駐官養成高校の決闘」(講談社)を出しました。これは近未来の極右の士官学校を舞台にした小説です。中途半端な保守から先の行ききった世界を書いてみたかったのと、少年漫画の物語のルーティンのようなものを試したかった。

「逆島断雄と進駐官養成高校の決闘」石田衣良著(講談社 1,728円税込)


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【内容情報】(出版社より)
経済成長は行き詰まり、列強が資源と市場を奪い合う高度植民地時代。氾帝国、エウロペ連合、アメリア民主国の三大列強による世界の寡占化が進んでいた。その中で劣勢を強いられている日乃元皇国だが、植民地支配の中枢を担う進駐官を育てる全寮制の東島進駐官養成高校には、国中からエリート中のエリートが集まっている。ここに新入生として入学した逆島断雄。逆島家は、皇室を守護する近衛四家のひとつとして様々な特権を与えられていたが、戦死した父・靖雄が国家反逆罪に問われたため、すべての特権を奪われ没落していた。そのため、断男は、争いを嫌う性格にもかかわらず、家の再興を担わされていた。
優秀な軍人を育てるため、非人間的ともいえる厳しいカリキュラムのなかで、断雄は同室同班となった仲間、あらゆるジャンルで学年一位の超イケメン・ジョージ、硬派の柔術家・テル、ナンパだが度胸が据わっているクニの三人との友情を育んでいく。ところが、入学早々に起こった謎の狙撃事件を皮切りに、断雄の周りでは次々と不可解な事件が起こる。そして、それらの事件の裏側に、皇室を巻き込んで国家転覆を謀るクーデター計画が浮かび上がってきた。その勢力にとって、反クーデター派の信望があつい逆島家の子息・断雄は抹殺すべき対象だったのだ……。


逆島断雄と進駐官養成高校の決闘
講談社
石田 衣良

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石田衣良 講談社発行年月:2015年12月23日 予約締切日:2015年12月22日 ページ数:51


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基本情報
発売日: 2015年12月23日頃
著者/編集: 石田衣良
出版社: 講談社
サイズ: 単行本
ページ数: 515p
ISBNコード: 9784062196956

【内容情報】
わずか15歳の少年に課せられた命懸けのサバイバル。襲いくる姿なき敵、国家転覆の陰謀、究極の殺戮兵器、千年の伝統を持つ格闘秘術…。希代のストーリーテラーが放つ怒涛の青春アクション・エンターテインメント!

【著者情報】
石田衣良(イシダイラ)
1960年、東京都生まれ。成蹊大学経済学部卒業。広告制作会社勤務を経て、’97年、『池袋ウエストゲートパーク』で第36回オール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。2003年、『4TEEN(フォーティーン)』で第129回直木賞を受賞。’06年、『眠れぬ真珠』で島清恋愛文学賞を受賞。’13年、『北斗 ある殺人者の回心』で中央公論文芸賞を受賞した。

 で、この小説を書いていて、例の安保法案をめぐる流れが二次創作の世界のように感じたんです。政府も反対している側もリアル感がないんですよ。戦うこととか戦争に対して。本当の怖さを感じないまま、ある理念の中で小さく争っている。デモに何万人集まったと聞いても、興味の無いアーティストのコンサートに人がたくさん集まったのと変わらないように、その雰囲気が外に届いていない気がするんですよね。これは無関心の時代が進んだこともあります。お互いが相手のいうことに耳を貸さないで、タコ壺化している。誰かが興味あることでも他の人には興味が無い。

 それはテロも同じ。テロも全く相手の言うことを聞かない、言葉が通じない別な価値観のもとで起きている。

 それとヨーロッパの人道主義はセンチメンタルな部分が大きかったんだなと思った。亡くなった子どもの写真で難民に扉が開いたと思ったら、パリのテロがあった途端に急速に閉じた。あれほど高い理想を掲げながら、どちらも感情とかセンチメンタリズムで動いてしまっているなあと感じはありましたね。

 アメリカも大統領候補のトランプ氏の発言がねえ。民主主義の成熟みたいなのがここ何年かでずいぶん後退してしまいました。人間は自分が正義だと思うと過剰に正義をふるうから、そこは気になります。例のフランスの空爆もロシアの介入もそうですし。お互いが正しさの構図に酔っている。

 結局、そういうものは豊かさが担保していたのかと思う。グローバリズムで下半分の生活が苦しくなるとそういう人たちは保守化するし、外国人排斥、自国尊重に走るんですよね。日本でもテレビで最近多い「日本最高」みたいな番組は本当に気持ち悪い。食い詰めた外国人の三流タレントみたいなのをスタジオに集めて日本を褒めそやすって、なんなんでしょうね、あの構図は。

「正義に酔う感じ」というのは、ブラック企業にも通じるところがあります。「働くことに感謝」、「生きることに感謝」、「感謝」といういっけん反対できない甘いモラルの言葉で人を洗脳していく。今年のブラック企業大賞が「セブンイレブン」ですから、日本最大のコンビニチェーンがブラックだったら、どうすればいいのという感じ。みんなの星だったユニクロも候補でしたし。残業支払わないとか、貧乏臭い感じが嫌だねえ。

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