サウジアラビアが原油の減産をしない理由 佐藤優氏解説

サウジアラビアが原油の減産をしない理由 佐藤優氏解説
NEWSポストセブン2016.02.12 16:00

http://www.news-postseven.com/archives/20160212_383380.html?PAGE=1#container


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【サウジアラビアの首都リヤドで建設中のジッダタワー】

 中東の二大大国が激しい火花を散らしている。中東一の産油国として知られるサウジアラビアと、古代ペルシャ時代からの伝統を受け継ぎながら核問題を巡って米国と対立してきたイラン。そのイランが米国と雪解けを果たしたことを機に、中東のパワーバランスに異変が起きている。そして、影響は原油にも……。作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が指摘する。

 * * *
 サウジはイランとの国交断絶を通して米国にもシグナルを送っている。米国は、イランの核開発問題で譲歩すれば、イランはIS(イスラム国)対策で協力するという単純な方程式を考えた。その結果、2015年7月14日に、オーストリアの首都ウイーンで、イランの核問題を巡る合意が米英仏露中独とイランの間で締結された。この合意は、事実上、イランの核開発を容認する内容だ。

 米国はウイーン合意の結果、ISとの戦いでイランとの共同戦線が構築されたと勘違いしている。イランは、核開発について、米国が譲歩しなくても、ISとの戦いでは、米国と共同戦線を組まざるを得なかった。なぜなら、ISの第一義的目標がシーア派の殲滅だったからだ。イランは自らの生き残りのために、ISと戦っているに過ぎない。

 この基本認識がオバマ政権にはできていない。核開発問題で米国が譲歩したことを、イランは、米国の善意ではなく、弱さを示すものであると受け止めた。そして、シリアのアサド政権への梃子入れを強化し、シリア北部を経由して、レバノンのシーア派民兵組織「ヒズボラ」への軍事支援を強化することに成功した。

 さらに、イエメンのフーシー派(シーア派)、バーレーンのシーア派に対する梃子入れを強めてサウジに対する包囲網を作ろうとした。このような状況に対して、サウジは米国にイランの脅威を強く訴えたが、米国は真剣に取り合わなかった。

 イランは、米国とサウジの間にすきま風が吹いていることを正確に認識し、サウジ内のシーア派を煽動して、サウジの王制の弱体化を画策し始めた。1月2日にサウジが、シーア派指導者のニムル師を処刑したのは、イランと米国に対して、「これ以上、事態を看過することはない」という姿勢を鮮明にするシグナルでもあった。しかし、米国はこのシグナルを読み取れていない。

 今後、中東の政治、軍事、経済の危機、さらにエネルギー危機もサウジが震源地となる可能性が高い。原油価格が国際的に低迷しているにもかかわらず、サウジは原油の減産をしない。それは、シェアの確保をサウジが重視しているからだ。サウジの財政危機が伝えられているが、サウジは人口が少なく、原油価格が1バレルあたり30~40米ドルの間で推移しても、国家が破綻することはない。

 サウジは、国際オイルマーケットで主導的役割を演じ続けることが国益と考えている。米国によるシェール・オイル開発をはじめとする代替エネルギーの開発を阻止し、原油価格決定の中心的プレイヤーとしての地位を確保することが、サウジの戦略だ。

 さらにサウジが石油安を誘導する要因が増えた。国際社会によるイランに対する制裁の解除だ。

 サウジの原油生産費は、イランよりも安い。経済制裁が解除され、原油を販売することでイランは外貨を得て石油関連施設の設備を更新することを考えている。

 それを阻止するためにも、サウジは、原油の減産に応じず、安値を維持し、イランへの利益を極少化すべく腐心するであろう。

【PROFILE】
1960年生まれ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。SAPIOで半年間にわたって連載した社会学者・橋爪大三郎氏との対談「ふしぎなイスラム教」を大幅に加筆し『あぶない一神教』(小学館新書)と改題し、発売中。

※SAPIO2016年3月号

「あぶない一神教」 (小学館新書)橋爪大三郎, 佐藤優著(小学館 842円税込)


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【内容情報】(出版社より)
世界の「混迷」を解き明かす最強の入門書

一神教世界はかなり「あぶない」。だが日本は、もっと「あぶない」。ではどうする!?(社会学者・橋爪大三郎)

大陸から隔絶された島国で暮らす日本人にとって、いま何が足りないのか。目に見えない知を論理的に突き詰めて、超越的な世界を知ろうとする態度ーー 一神教に対する理解だと思うのです(元外務省主任分析官・佐藤優)

9.11テロから「イスラム国」誕生まで。キリスト教世界とイスラム教世界の衝突が激しさを増している。だが、歴史を遡れば、両宗教は同じ「神」を起源としていたはず。どこで袂を分かち、何が異なり、なぜ憎しみ合うのか。社会学者・橋爪大三郎氏と元外務省分析官・佐藤優氏による白熱対談。

キリスト教徒23億人。イスラム教徒16億人。世界の半数を占める一神教信徒のルールを知ることで、日本人が国際社会で闘うための術が見えてくる。

【目次】
まえがき
序章 孤立する日本人
第一章 一神教の誕生
第二章 迷えるイスラム教
第三章 キリスト教の限界
第四章 一神教と資本主義
第五章 「未知なるもの」と対話するために
あとがき

【編集担当からのおすすめ情報】
両氏の対談は計4回、約10時間50分に及びました。「イスラム国」問題を入り口にした対談は、キリスト教文明ーー欧米の抱える問題をめぐって白熱し、最終的には日本人の進むべき道に議題が移っていきます。一神教を理解することは国際社会を理解すること。これから世界と対峙する若者やビジネスマンに、ぜひ手に取っていただきたい本です。

【目次】
まえがき
序章 孤立する日本人
第一章 一神教の誕生
第二章 迷えるイスラム教
第三章 キリスト教の限界
第四章 一神教と資本主義
第五章 「未知なるもの」と対話するために
あとがき


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小学館新書 橋爪大三郎 佐藤優 小学館発行年月:2015年10月01日 ページ数:269p サイズ:


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基本情報
発売日: 2015年10月01日頃
著者/編集: 橋爪大三郎, 佐藤優
出版社: 小学館
サイズ: 新書
ページ数: 269p
ISBNコード: 9784098252565

【内容情報】
9・11テロから「イスラム国」誕生まで。キリスト教世界とイスラム教世界の衝突が激しさを増している。だが、歴史を遡れば、両宗教は同じ「神」を崇めていたはず。どこで袂を分かち、何が異なり、なぜ憎しみ合うのか。社会学者・橋爪大三郎氏と元外務省主任分析官・佐藤優氏が「世界の混迷」を解き明かす。

【目次】
序章 孤立する日本人
第1章 一神教の誕生
第2章 迷えるイスラム教
第3章 キリスト教の限界
第4章 一神教と資本主義
第5章 「未知なるもの」と対話するために

【著者情報】
橋爪大三郎(ハシズメダイサブロウ)
1948年神奈川県生まれ。社会学者。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。1995-2013年、東京工業大学教授

佐藤優(サトウマサル)
1960年東京都生まれ。作家、元外務省主任分析官。同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省

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