北方領土返還は絶望的…日ロ交渉が“破談”に終わった理由

北方領土返還は絶望的…日ロ交渉が“破談”に終わった理由
日刊ゲンダイ2016年11月21日

http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/194299


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成果なしの日ロ首脳会談(右=トランプ氏の娘イバンカ&クシュナー夫妻)/(C)ロイター

 事前のシナリオが完全に狂ったのだろう。ペルーの首都リマで19日午後(日本時間20日午前)に行われた安倍首相とロシアのプーチン大統領の首脳会談。70分に及ぶ会談を終えた安倍首相の表情は、落胆した様子がアリアリ。北方領土問題を含む平和条約締結交渉の進展状況を記者団から問われると、「解決に向けて道筋が見えてはきているが、簡単ではない」と答えるのが精いっぱいだった。

 恐らく安倍首相は会談で、日本側が示した医療や都市整備、エネルギーなど8項目に上る「経済協力」と引き換えに、プーチンから北方領土返還に向けた何らかの“言質”を引き出したかったに違いない。

 ところがプーチンは、日ロ両国の貿易高が半年間で4割近くも減ったことを示して、「第三国による政治的な措置の結果」と指摘。ウクライナ問題で経済制裁を強める欧米に、足並みを揃える日本を批判したという。

 平和条約締結どころか、北方領土の2島返還すら絶望的な雰囲気だが、すでに“伏線”はあった。「経済協力」でロシア側の窓口だったウリュカエフ経済発展相が今月、巨額収賄の容疑で刑事訴追、解任されたからだ。

「訴追ということは、ずっと捜査が進んでいたわけで、プーチン大統領も知っていたはず。通常は外交交渉の窓口を突然パクることはしません。相手国に対して失礼に当たるからです。何の情報も掴んでいなかったロシアの日本大使館の“無能ぶり”にも呆れますが、外務省内では『これで日ロ平和条約は終わった』と囁かれていました」(外務省担当記者)

 “破談”の理由はまだある。安倍首相と米国のトランプ次期大統領の会談を「失敗」とみたプーチンが、もはや日米関係など恐れるに足らず――と判断した可能性だ。

「(約50万円の)ゴルフクラブを贈ったことがトランプ会談を台無しにした」とみる国際弁護士の湯浅卓氏はこう言う。

「米国のビジネスマンや政治家が金品などの贈り物を受け取らないのは(贈収賄容疑を避けるための)“常識”です。トランプ氏はビジネスマンである上、(公職の)次期大統領です。会談に家族など第三者を立ち会わせたのは恐らく、安倍首相からゴルフクラブを贈られても、『私自身は受け取っていない』との立場を明確にするためでしょう。それぐらい神経を使うことなのです。そもそも、モノで相手の気を引こうなんて外交相手に失礼でしょう。ドイツのメルケル首相がトランプ氏と会う時、ベンツのキーを贈ると思いますか? 絶対にしません。英国と並ぶ外交大国のロシアのプーチン大統領が、安倍首相を冷ややかな目で見るわけです」

 ちなみに米国には「海外腐敗行為防止規制」があり、贈賄行為には特に厳しい。禁止の「利益供与」には、金品だけでなく接待や贈答も含まれる。トランプにとってゴルフクラブの贈り物は大迷惑だっただろう。そんな安倍首相の「朝貢外交」を見たプーチンが強硬姿勢に出るのは当然。結局、プーチンに「いいとこ取り」されてオシマイだ。

「日ソ国交回復秘録 北方領土交渉の真実」 (朝日選書) 松本俊一 (著), 佐藤優(解説) (著)(朝日新聞出版)


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1955~56年、日ソ国交正常化交渉の最前線に立った「日本側全権」松本俊一が、詳細なメモをもとに「発端」から「共同宣言成立」まで交渉の知られざる舞台裏を明かす。歯舞、色丹、国後、択捉の北方四島返還問題や抑留者引き揚げ問題ほか、ときあたかも「保守合同」という国内政治の激動期であったことから、松本ら交渉団は思いがけない国内勢力の「横やり」に苦しめられ、交渉は何度も暗礁に乗り上げる。なかでも、「二島返還で折り合うのならば、沖縄をアメリカの領土とし、日本に返還しない」と米国国防長官が迫ったとされる、いわゆる「ダレスの恫喝」は東西冷戦下における国際関係の実態が色濃く投影され圧巻。日ソ国交正常化に心血を注いだ時の首相・鳩山一郎、それを支えた河野一郎、三木武吉、日ソ交渉に慎重だった吉田茂、重光葵ら当時の政治家たちの本音と思惑が浮き彫りにされる。巻末の附属資料の一つ、グロムイコ第一外務次官と松本俊一全権(著者)との往復書簡は今日でも日本が「北方領土問題は未解決」と四島返還を主張する論拠となっており資料的価値もきわめて高い。このほか「条約案・口上書」などの公電、両国首脳(ブルガーニン‐鳩山一郎)の書簡などは本文と参照しながら読むと、より交渉の内実が伝わってくる。1966年の名著『モスクワにかける虹』の復刊。佐藤優氏による大型書き下ろし解説付き。


日ソ国交回復秘録 北方領土交渉の真実 (朝日選書)
朝日新聞出版
2012-08-10
松本俊一

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登録情報
単行本: 320ページ
出版社: 朝日新聞出版 (2012/8/10)
言語: 日本語
ISBN-10: 4022599928
ISBN-13: 978-4022599926
発売日: 2012/8/10
商品パッケージの寸法: 12.5 x 1.5 x 18.8 cm

内容(「BOOK」データベースより)
1955~56年、日ソ国交正常化交渉の最前線に立った「日本側全権」松本俊一が詳細なメモをもとに「発端」から「共同宣言成立」まで交渉の知られざる舞台裏を明かす。北方領土、抑留者引き揚げ問題ほか、「保守合同」という国内政治の激動期であったことも複雑に絡み、交渉は難航。「二島返還で折り合うのならば、沖縄をアメリカの領土とし、日本に返還しない」と迫った米国務長官ダレスの恫喝など東西冷戦下の国際関係の実相や、鳩山一郎、河野一郎、吉田茂、重光葵ら政治家たちの思惑が浮き彫りにされる。「日ソ交渉日誌」「附属資料」など貴重な史料も多数収録。一般的には閲覧が困難な史料を用いた佐藤優の大型解説付き。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
松本/俊一
元駐英大使、元自民党代議士。1897年、台湾・台北市生まれ。東京大学卒業後、外務省に入り、条約局長、外務次官、駐仏印・駐英各大使などを歴任。1955年、衆議院議員当選(当選3回)。同年6月、日ソ国交回復正常化の全権となり、56年10月、鳩山・河野氏らと並んで日ソ共同宣言に調印するまで終始交渉の矢面に立った。65年、外務省顧問としてベトナム、中国を訪問。87年1月死去

佐藤/優
作家・元外務省主任分析官。1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修士課程修了後、外務省入省。対ロシア外交で活躍。2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)