【書評】 『童蒙おしえ草 ひびのおしえ』福澤諭吉著  自信ありげに見える人間はおそらく自信がない

【書評】自信ありげに見える人間はおそらく自信がない
NEWSポストセブン2016.12.22 16:00

http://www.news-postseven.com/archives/20161222_477701.html

 年末年始はじっくりと本を読む良いチャンスだが、本読みの達人が選ぶ書は何か。ドイツ文学者でエッセイストの池内紀氏は、次期米大統領であるドナルド・トランプ氏を読み解く書として『童蒙おしえ草 ひびのおしえ』(福澤諭吉・著/岩崎弘訳・解説/角川ソフィア文庫/1080円+税)を推す。池内氏が同書を解説する。

 * * *
 福澤諭吉は明治五年(一八七二)、イギリスの『モラル・クラス・ブック』をもとにして、子ども向けの本をつくった。人間として大切な基本の考えを説いた。その現代語訳が文庫になって、「童蒙」よりも、むしろ大人に訴えてくる。

 たとえば巻の四のアメリカ初代大統領ジョージ・ワシントンを語ったくだり。「政府の仕事のよい役」が空席で、人事を行う。世間はてっきり「特別な親友」である某氏が指名されると思っていた。

 ところが手ごわい論敵として知られた人がその役に就いた。ワシントンは理由を述べた。自分はただのジョージ・ワシントンではなく合衆国の大統領であって、「私の心」で決めてはならず、「合衆国の大統領の公の立場では、これはどうすることもできません」

 大統領制という政治制度をはっきりわきまえた人の言である。これはイギリスや日本などの議院内閣制とまったく違う制度なのだ。アメリカの大統領は任期のある王さまであって、同格の人物のいない屹立した存在であり、この一人に決定が集中する。

 そういう制度の下にあって、しかしながら決定するのは人間である。ナマ身の個人なのだ。いかにこれがリスクを孕んだシステムであるか、王さまと個人のかかわりからも見てとれる。政策決定の側近に論敵を指名した初代の英知がわかるのだ。

 第四十五代・ドナルド・トランプはどうだろう。選挙期間中の数々の戦略的暴言よりも、むしろ背後に見てとれた「個人」こそ興味深い。急速に成り上がった経営者におなじみだが、彼は反対意見を、自分個人に対する挑戦と考える。秘密に対する強烈な執着からして、まわりを忠誠を誓う「特別の親友」あるいは身内でかためるだろう。それぞれの性格と弱点を知っていなくては承知できないからだ。

 おそらく自信ありげに見える人間は、えてしておそらく自信のない人間である。いずれ世界は、最悪の人物を唯一無二のポストにつけた愚を思い知る。

※週刊ポスト2017年1月1・6日号

「童蒙おしえ草 ひびのおしえ 現代語訳」(角川ソフィア文庫) 福澤 諭吉著(KADOKAWA 1,166円税込)


画像


【内容情報】(出版社より)
命の大切さ、チャレンジ精神、品格や人への心遣い等を、イソップ物語や童話を通して、心に語りかけるように教える『童蒙をしへ草』。福澤自身が一太郎、捨次郎の息子二人のために、家庭から学ぶべき約束事や常識を、毎日半紙一枚ずつ各々へ書き付けた「ひゞのをしへ」。人として大切な基本の態度や考え方を諭し、少年少女たちの自立精神を育む名著を、小学生から読めるよう現代語訳。いま読んでも驚くほどの普遍性をもつその内容は、身分や旧習に縛られない福澤の先駆的考え方と人格が端的にあらわされている。現代的意義を踏まえた丁寧な解説とともに、人間教育の原点を照らす決定版。

まえがき
この本を読む方へ

●童蒙おしえ草 巻の一
第一章 生き物を大切に
第二章 家族を大切に
第三章 いろいろな人との交流
第四章 働くこと
第五章 自分のことは自分でする
第六章 あわてないこと
   
●童蒙おしえ草 巻の二
第七章 自分で考え自分で判断し実行すること
第八章 威張ったり、うぬぼれたりしないこと
第九章 礼儀のこと
第十章 飲食のこと
第十一章 健康なこと
第十二章 自ら満足すること
第十三章 お金を無駄に使わない

●童蒙おしえ草 巻の三
第十四章 思いやりのある心
第十五章 怒ったり、我慢したりすること
第十六章 穏やかなこと
第十七章 自分の物と他人の物
第十八章 他人の名誉

●童蒙おしえ草 巻の四
第十九章 自由と権利
第二十章 仕事を誠実にすること
第二十一章 お金の貸し借り
第二十二章 品 格
第二十三章 買物をするとき
第二十四章 約 束
第二十五章 人の邪魔や悪戯
第二十六章 うそや偽りのいけないこと

●童蒙おしえ草 巻の五
第二十七章 心の広い人
第二十八章 勇気のある人
第二十九章 わが国を大切にし、外国と仲よくすること

●ひびのおしえ 一編
おさだめ(七つの大切なこと)/本を読む/ひどいことをしない 他

●ひびのおしえ二編
天道さまのおきて/学問をすべし/日本の時と西洋の時 他

あとがき
文庫版あとがき
童蒙おしえ草 さくいん


童蒙おしえ草 ひびのおしえ 現代語訳 (角川ソフィア文庫)
KADOKAWA
2016-11-25
福澤 諭吉

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 童蒙おしえ草 ひびのおしえ 現代語訳 (角川ソフィア文庫) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



童蒙おしえ草 ひびのおしえ 現代語訳 [ 福澤 諭吉 ]
楽天ブックス
角川ソフィア文庫 福澤 諭吉 岩崎 弘 KADOKAWA発行年月:2016年11月25日 予約締切日


楽天市場 by 童蒙おしえ草 ひびのおしえ 現代語訳 [ 福澤 諭吉 ] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


商品基本情報
発売日: 2016年11月25日
著者/編集: 福澤 諭吉, 岩崎 弘
出版社: KADOKAWA
サイズ: 文庫
ページ数: 448p
ISBNコード: 9784044001636

【内容情報】(「BOOK」データベースより)
命の大切さ、チャレンジ精神、品格や人への心遣い等を、物語や童話を通して、心に語りかけるように教える『童蒙をしへ草』。福澤自身が息子二人のために、家庭から学ぶべき約束事や常識を、毎日半紙一枚ずつ各々へ書き付けた「ひゞのをしへ」。人として大切な基本の態度や考え方を諭し、少年少女たちの自立精神を育む名著を、小学生から読めるよう現代語訳。現代的意義を踏まえた丁寧な解説とともに、人間教育の原点を照らす決定版。

【目次】(「BOOK」データベースより)
童蒙おしえ草
生き物を大切にー命の大切さを学ぶ
家族を大切にー家族のあり方が子どもを育む
いろいろな人との交流ー人間関係の大切さを学ぶ
働くことー働くことは自分を世の中に生かすこと
自分のことは自分でするー独立心を育てること ほか
ひびのおしえ 一編
おさだめ(七つの大切なこと)
本を読む
ひどいことをしない
子どもの独立
人の心の違い ほか

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
福澤諭吉(フクザワユキチ)
1835年大坂中津藩蔵屋敷生まれ。54年蘭学を志し、長崎に出る。翌年緒方洪庵の適塾入門。56年福澤家の家督を継ぐ。58年江戸中津藩中屋敷に蘭学塾を開くが、翌年英学に転向。60年軍艦咸臨丸でサンフランシスコへ渡航。62年幕府遣欧使節随行員としてヨーロッパを歴訪。68年塾舎を芝新銭座に移転、「慶應義塾」と命名し、71年には三田へ移転。90年慶應義塾大学部を設置。1901年、66歳で死去

岩〓弘(イワサキヒロシ)
慶應義塾福澤研究センター顧問。1944年生まれ。埼玉県出身。明治学院大学経済学部卒業。白百合学園小学校教諭を経て、74年に慶應義塾幼稚舎教諭に就任。2010年3月同校定年退職。『慶應義塾史事典』(慶應義塾大学出版会/2008年)編集委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0