【書評】  林業がつくる日本の森林 藤森隆郎 著(築地書館・1944円)

【書評】
林業がつくる日本の森林 藤森隆郎 著(築地書館・1944円)
東京新聞2017年1月8日

http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2017010802000185.html


画像


◆健全化へ垣根越えて

[評者]宇江敏勝=作家・林業家

 私の住む和歌山県南部は林業地で、見わたすかぎりスギとヒノキに埋めつくされている。あいだの熊野古道はユネスコの世界遺産だから訪れる人も多い。ほとんどは植林の中の道で、里に出れば空き家が眼につき、田畑は耕作放棄されて草が茂っている。これらの景色を都会の人々はどのように見て歩くのだろう。

 著者によれば、日本の国土の約七割を占める森林のうち植林は四割にのぼるという。間伐などの手ぬきで森林は荒れ、輸入外材におされて国産材の自給率は三割弱。山村は疲弊し後継者もいない、という認識は私も共有する。健全な森林は温暖化防止をはじめ、水資源や土壌、生物多様性など地球環境の保全にとって不可欠である。どうしたらよいのだろう。

 森と林業にはさまざまの立場の人が関係している。政治家、官僚、研究者(著者もその一人)、技術者、山林所有者、労働者、流通業者、消費者などである。本書はそのあいだの合意と調和をはかる科学的根拠が必要だという視点で書かれているが、現場の経営と管理を把握すべきフォレスター(森林官)がわが国にはいない、という指摘には驚かされた。

 もっとも必要なのは一般市民の理解と支援だと強調している。私も語り部として、熊野古道を案内して歩くときは、できるかぎり森を見てもらうような話をするのである。

 <ふじもり・たかお> 1938年生まれ。農学博士。著書『森づくりの心得』など。

「林業がつくる日本の森林」 藤森 隆郎著(築地書館 1,944円税込)


画像


【内容情報】(出版社より)
半世紀にわたって森林生態系と造林の研究に携わってきた著者が、生産林として持続可能で、生物多様性に満ちた美しい日本の森林の姿を描く。
日本列島各地で、さまざまな条件のもと取り組まれている森づくりのめざすべき道を示した。
はじめに
第1部 日本の森林・林業の現状と問題点
1 何を問題として問うのか
2 木材生産量は減り続け、人工林は劣化している
   コラム1 天然林、天然生林、人工林(更新、天然更新)
3 山で働く人が減少し様々な問題が起きている
4 ビジョンの見えない森林管理が進んでいる
   コラム2 本来の間伐とは
5 林業力低下の理由
6 林業関係者に必要なこと
7 林業の背景となる日本社会の歩み
8 林業の歩み
   コラム3 複相林施業
9 国産材の供給、販売体制が遅れてきた
10 木を使うことの意味
11 地域における循環と文化の喪失
12 国民と森林との距離が遠すぎる

第2部 問題を解決するために必要なことは何か
1 目標とする社会の姿
2 目標とする森林の姿
3 森林についてよく知ること
4 目標林型の求め方
5 合意形成のプロセスと科学的根拠
6 日本の自然、森林との付き合い方
7 森林を扱う技術者と経営者
8 自伐林家と集約化
9 林業と木材産業の関係
10 木を扱う技術者の育成

第3部 新たな森林管理のために必要なこと
1 森林管理のリーダーであるフォレスターの必要性
2 今の制度では技術の専門家は育たない
3 研究機関と行政の間の関係の改善
4 「根拠」を問うこと
5 ボトムアップの法律・制度・政策が必要
6 ボトムアップのための地域から国へのシステム
7 森林所有者と市民との関係
8 国際的視野に立つこと

第4部 豊かな日本の農山村と社会を目指して
1 地球環境保全と森林との付き合い方
2 持続可能な社会のために農山村に必要なこと
3 技術者が誇りを持てる社会
4 日本の森林と社会への決意

おわりに
主な参考文献


林業がつくる日本の森林
築地書館
藤森 隆郎

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 林業がつくる日本の森林 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



林業がつくる日本の森林 [ 藤森 隆郎 ]
楽天ブックス
藤森 隆郎 築地書館発行年月:2016年10月07日 予約締切日:2016年10月03日 ページ数:


楽天市場 by 林業がつくる日本の森林 [ 藤森 隆郎 ] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


商品基本情報
発売日: 2016年10月07日
著者/編集: 藤森 隆郎
出版社: 築地書館
サイズ: 単行本
ページ数: 200p
ISBNコード: 9784806715269

【内容情報】(「BOOK」データベースより)
半世紀にわたって森林生態系と造林の研究に携わってきた著者が、生産林として持続可能で、生物多様性に満ちた美しい日本の森林の姿を描く。日本列島各地で、さまざまな条件のもと取り組まれている森づくりの目指すべき道を示した。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1部 日本の森林・林業の現状と問題点
何を問題として問うのか
木材生産量は減り続け、人工林は劣化している ほか
第2部 問題を解決するために必要なことは何か
目標とする社会の姿
目標とする森林の姿 ほか
第3部 新たな森林管理のために必要なこと
森林管理のリーダーであるフォレスターの必要性
今の制度では技術の専門家は育たない ほか
第4部 豊かな日本の農山村と社会を目指して
地球環境保全と森林との付き合い方
持続可能な社会のために農山村に必要なこと ほか

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
藤森隆郎(フジモリタカオ)
1938年京都市生まれ。1963年京都大学農学部林学科卒業後、農林省林業試験場(現在の森林総合研究所)入省。森林の生態と造林に関する研究に従事。農学博士。研究業績に対して農林水産大臣賞受賞。1999年、森林環境部長を最後に森林総合研究所を退官。社団法人日本森林技術協会技術指導役、青山学院大学非常勤講師を務めた。国連傘下の持続可能な森林管理の基準・指標作成委員会(モントリオールプロセス)の日本代表、IPCCの執筆委員など国際活動を務め、IPCCのノーベル平和賞受賞に貢献したとして、IPCC議長から表彰された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

◆もう1冊 
 田中淳夫著『森と日本人の1500年』(平凡社新書)。日本の森が人との関わりの中でどう変わってきたかを追う。


森と日本人の1500年 (平凡社新書)
平凡社
田中 淳夫

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 森と日本人の1500年 (平凡社新書) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



森と日本人の1500年 [ 田中淳夫 ]
楽天ブックス
平凡社新書 田中淳夫 平凡社発行年月:2014年10月15日 ページ数:239p サイズ:新書 IS


楽天市場 by 森と日本人の1500年 [ 田中淳夫 ] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0