【書評】 プリズン・ブック・クラブ アン・ウォームズリー 著(向井和美訳、紀伊國屋書店 2052円)

【書評】
プリズン・ブック・クラブ アン・ウォームズリー 著(向井和美訳、紀伊國屋書店 2052円) 
東京新聞2017年1月8日

http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2017010802000187.html


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◆感動の嘘 見抜いた受刑者

[評者]永江朗=フリーライター

 読書会に参加したことはありますか? 評者は最初、他人と本の感想を語り合うなんていやだと思っていたのですが、参加してみると面白くて、時間があっというまに過ぎます。同じ作品でも、人によって受け取り方や考えることが違うのですね。

 本書は刑務所内の読書会についてのノンフィクションです。カナダ人ジャーナリストである著者は、友人に誘われ、いやいやながら刑務所内の読書会運営を手伝います。なぜ尻込みしていたかというと、彼女は強盗に遭(あ)った苦い思い出があるから。おっかなびっくり始めた読書会ですが、回を重ねるごとに著者も夢中になっていきます。毎月一冊、一年半で約二十冊を読んだ本はスタインベック『怒りの葡萄(ぶどう)』やO・ヘンリー『賢者の贈り物』などの古典から、アトウッド『またの名をグレイス』のような現代作品までさまざま。

 受刑者たちの反応が興味深い。ひとりの発言が他の人の発言を引き出し、思わぬ展開を見せることもあり、まさに読書会の醍醐味(だいごみ)です。

 鋭い読みをする受刑者もいます。『スリー・カップス・オブ・ティー』という、アメリカの慈善家の著書を取り上げたときのこと。当時、この本はたいへん評判になり、北米中が感動の嵐に包まれました。オバマ大統領がこの慈善家の活動に十万ドルも寄付したほどです。

 みんなが口々に感動を語っているなか、グレアムという受刑者はこの本の矛盾点を指摘します。すると読書会の六週間後、スキャンダルが明るみに。例の本は虚偽や誇張に満ちており、寄付金を流用していたのでした。ちなみにグレアムは薬物の密売と恐喝の罪で十七年の刑に服しています。

 読書会のいいところは、たんに本を読むだけでなく、自分と違う考えをする他人がいると実感できること。違うからこそ、驚きがあり、発見がある。著者にとっても塀の中の読書会はすばらしい経験になっています。

 <Ann Walmsley> カナダ・トロント在住のジャーナリスト。

「プリズン・ブック・クラブーーコリンズ・ベイ刑務所読書会の一年」 アン・ウォームズリー、向井和美訳(紀伊國屋書店 2,052円税込)


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【内容情報】(出版社より)
重罪犯を収容するカナダのコリンズ・ベイ刑務所で定期的に開かれる読書会。
『怒りの葡萄』『またの名をグレイス』…刑務所内での本をかこんでのやりとりを通して
囚人たちは読書の楽しみを知り、自らの喪失感や怒り、罪の意識について吐露し、
人種や宗教の壁を越え、異なる意見の持ち主の話にも耳を傾けるようになった。
1年間ボランティアとして運営に関わったジャーナリストが見た、囚人たちの変化とは。
胸に迫るノンフィクション。
1 墓地でのウォーキング
2 約束は守られた(モーテンソン『スリー・カップス・オブ・ティー』)
3 あなたは正常ですか?(ブラウン『月で暮らす少年*』、ハッドン『夜中に犬に起こった奇妙な事件』)
4 Nで始まる差別語(ヒル『黒人たちの物語*』)
5 きれいな朝焼けは看守への警告(ミストリー『かくも長き旅』)
6 夏に読んだ本 
7 読書会という隠れ蓑(シェイファーほか『ガーンジー島の読書会』)
8 グレアムとフランクの読書会(ギャロウェイ『サラエボのチェリスト』)
9 この環境に慣らされてしまったのさ(ジャンガー『戦争*』)
10 虐待かネグレクトか(ウォールズ『ガラスの城の子どもたち』)
11 今日一日を生きなさい(スタインベック『怒りの葡萄』)
12 刑務所のクリスマス(オー・ヘンリー『賢者の贈り物』『警官と讃美歌』、エリオット『賢者の旅*』)
13 三人の読書会(ラーソン『第三帝国の愛人』、グラッドウェル『天才! 成功する人々の法則』)
14 島の暮らし(レヴィ『スモール・アイランド*』)
15 もうひとりの囚われびと(ヒルシ・アリ『もう、服従しない』)
16 傷を負った者(ドイル『ポーラーードアを開けた女』)
17 容疑者たち(ボイド『ありふれた嵐*』、スワループ『6人の容疑者』)
18 善は悪より伝染しやすい(アッカーマン『ユダヤ人を救った動物園』)
19 史実を再構成する(アトウッド『またの名をグレイス』)
20 最後の読書会(『またの名をグレイス』ふたたび)
21 巣立っていったメンバーたち

*は邦訳のない作品


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商品基本情報
発売日: 2016年08月29日
著者/編集: アン・ウォームズリー, 向井和美
出版社: 紀伊國屋書店
サイズ: 単行本
ページ数: 448p
ISBNコード: 9784314011426

【内容情報】(「BOOK」データベースより)
読書会運営に関わったカナダ人ジャーナリストによる胸に迫るノンフィクション!彼らが夢中になっているのはもはや麻薬ではなく書物なのだ。囚人たちの読書会。

【目次】(「BOOK」データベースより)
墓地でのウォーキング
約束は守られた『スリー・カップス・オブ・ティー』
あなたは正常ですか?『月で暮らす少年』『夜中に犬に起こった奇妙な事件』
Nで始まる差別語『ニグロたちの名簿』
きれいな朝焼けは看守への警告『かくも長き旅』
夏に読んだ本
読書会という隠れ蓑『ガーンジー島の読書会』
グレアムとフランクの読書会『サラエボのチェリスト』
この環境に慣らされてしまったのさ『戦争』
虐待かネグレクトか『ガラスの城の子どもたち』〔ほか〕

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
ウォームズリー,アン(Walmsley,Ann)
「グローブ&メール」「マクレアンズ」などに執筆するジャーナリスト。全米雑誌賞を四度受賞したほか、カナダ・ビジネス・ジャーナリズム賞、およびインターナショナル・リージョナル・マガジン賞を二度受賞している。初めて読書会を作ったのは九歳のとき。現在は家族とともにトロント在住

向井和美(ムカイカズミ)
京都府出身。早稲田大学第一文学部卒業。翻訳家。外国文学を読む読書会に20年ほど前から参加し、司書をつとめる中高一貫校では高校生たちの読書会のオブザーバーもつとめている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

◆もう1冊 
 A・スタインバーグ著『刑務所図書館の人びと』(金原瑞人ほか訳・柏書房)。刑務所図書館に勤めた名門大学出の男の体験実録。


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