【書評】 ロシア人学者が東京を歩いて辿る外国人スパイの足跡

【書評】ロシア人学者が東京を歩いて辿る外国人スパイの足跡
NEWSポストセブン2017.02.10 16:00

http://www.news-postseven.com/archives/20170210_490485.html

【書評】『東京を愛したスパイたち 1907-1985』/アレクサンドル・クラーノフ・著、村野克明・訳/藤原書店/3600円+税


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【評者】川本三郎(評論家)

「東京」に興味を持っているので書名に「東京」とあるとまず手に取ってみる。本書も専門外と思ったが「東京」が気になる。読み始めたらこれが面白い。

 戦前、戦後の東京に住んで諜報活動を行なった外国人の行動を辿っているのだが、著者の関心は彼らの活動にはなく、彼らにとっての東京にある。つまり、彼らが東京のどこに住んだか、どんなレストランやホテルを利用したか。現代ロシアの代表的日本学者という著者は、自身東京を愛し、町歩きを楽しみながらスパイたちの足跡を追う。

 ソ連のために働いたドイツ人の有名なゾルゲは東京のどこに住んだか。実際に歩いてみて、その家が麻布永坂町にあったことを突きとめる。なんとその場所は彼を監視していた鳥居坂警察署のすぐ近くだった。偶然か目くらましか。

 ゾルゲはオートバイ好きで夜の東京を走りまわった。ある時、事故を起し、ある建物の壁に衝突した。アメリカ大使館の壁だった。ゾルゲがよく行ったドイツのレストラン「ラインゴールド」(戦後は「ケテル」)が銀座にあったこと、そこで働く日本人女性と愛し合ったことにもページを割く。

 日本ではあまり知られていないさまざまなソ連のスパイが登場する。昭和のはじめ、東京に住んだオシェプコフなる人物は、講道館で柔道を学び、ロシア人としてはじめて段位を取得。帰国後はソ連流に改め、新しい格闘技「サンボ」を創始したという。

 興味をそそられるのは、ロマン・キムなる謎の多い人物。両親は朝鮮からロシアに亡命した。父親は商人となり、息子を日本の慶應義塾普通部に入学させた。少年時代のキムについては、志賀直哉の弟、直三が自伝『阿呆傳』で書いているという。

 長じてソ連のスパイとなった。驚くのは、戦後、推理小説を書いたこと。邦訳もある『切腹した参謀達は生きている』には終戦後、混乱期の東京の闇市が生き生きと描かれているという。この人物も間違いなく東京を愛した。

※週刊ポスト2017年2月17日号

「東京を愛したスパイたち」 アレクサンドル・クラーノフ著, 村野 克明訳(藤原書店 3,888円税込)


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【内容情報】(出版社より)
スパイたちの見た街「東京」を現代に再現!
サンボの創始者オシェプコフ、ソ連の探偵小説の先駆者ロマン・キム、そしてリヒャルト・ゾルゲ……二十世紀前半の東京を跋扈した、個性溢れるロシア/ソ連の諜報員たち。情報公開(グラスノスチ)による最新の資料を駆使して、高度に知的な彼らの実像と、その東京における足跡を辿り直した異色のドキュメント。


東京を愛したスパイたち 〔1907-1985〕
藤原書店
アレクサンドル・クラーノフ

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商品基本情報
発売日: 2016年12月21日
著者/編集: アレクサンドル・クラーノフ, 村野 克明
出版社: 藤原書店
サイズ: 単行本
ページ数: 432p
ISBNコード: 9784865781038

内容紹介
ロシア・スパイたちの目から見た戦前/戦後の「東京」の裏面史!
格闘技「サンボ」の創始者オシェプコフ、諜報団を率いたリヒャルト・ゾルゲ、そしてソ連の探偵小説の先駆者ロマン・キム……本人・関係者の文章と公的資料を駆使し、ロシア/ソ連という国家の転変に翻弄されたスパイたちの数奇な運命を描き、「東京」という都市に残されたその痕跡を著者自身の足で辿り直した、異色のドキュメント。

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日本の読者へ
序文

第1章 ワシーリー・オシェプコフ――格闘技「サンボ」の創始者
1 伝記の始まり
2 赤 坂
3 墓場の端っこでのロマン
4 講道館
5 万世橋駅前の記念碑
6 東京復活大聖堂(「ニコライ堂」)
7 ロシア帝国大使館
8 アジト、非合法の会合
9 伝記の結末

第2章 リヒャルト・ゾルゲ――諜報団の首魁
1 伝 記
2 東京のホテルのバーで
3 自宅のゾルゲ
4 バイク乗り、衝突事故を起こす
5 みんなから見える場所で
6 「ケテル」の黄金
7 「フレダーマウス(こうもり)」の胎内から「富士」の高みへ、そして「アジア」へ
8 六本木の外国人とその友たち
9 死、愛、不朽――巣鴨監獄から多磨墓地まで

第3章 キン・キリュー(ロマン・キム)――ソ連流国際探偵小説の元祖
1 伝 記
2 大学のある首都(東京)で
3 爆破された都市

第4章 忘れられたスパイたちの足跡を求めて――戦後の東京で
1 雪降る中を逃亡したラストヴォロフ
2 大仏を「寝かせた」コーシキン
3 「スパイ気取り」のプレオブラジェンスキー
4 「ディンドン」にやって来たレフチェンコ

訳者あとがき

本書関連略年表(1860-2005)
主要引用・参考文献一覧
主要人名索引
主要地名索引

出版社からのコメント
柔道をルーツとする格闘技「サンボ」の創始者ワシーリー・オシェプコフ、「ゾルゲ事件」で日本でも名高いリヒャルト・ゾルゲ、ソ連の探偵小説の先駆者として注目が高まっているロマン・キム、さらに、主として戦後に活動した四人の諜報員たち。
小伝によって彼らの人物像をコンパクトに紹介すると共に、彼らや関係者の書き残したもの、さらに公文書の記録から、麻布、青山、銀座、日比谷、新橋、御茶ノ水など、現代の東京にその足跡を再現し、著者自身が訪ね歩く。
われわれの見慣れた東京という都市の背後に、ロシア・ソ連のスパイたちの見たこの町が、二重写しになる。

著者について
【著者紹介】
●アレクサンドル・クラーノフ(Александр Куланов)
1970年モスクワ州生まれのロシアの日本学者、作家、ジャーナリスト。ヤロスラーヴリ高等軍事財務学校を卒業後、空挺部隊に勤務。1998年から日本研究に従事。1998-2000年に『今日の日本』誌、2000-02年に『外交官』誌の通信員を務める。2002-03年、東京大学大学院で「ロシアと日本のイメージの比較分析」の研究に取り組んだ。現在、『毎日新聞』付録の『ロシア NOW』と、ロシアのウェブ・サイト『謎の日本』のコラムニストとして活動中。

【訳者紹介】
●村野克明(むらの・かつあき)
1952年、東京都生まれ。1977年、札幌大学外国語学部ロシア語学科卒業。1983年、早稲田大学大学院文学研究科修士課程中退。
翻訳書に、モロジャコフ『ジャポニズムのロシア』(藤原書店)(第1回寺田真理記念日本研究賞の奨励賞を受賞)、オールコック他『富士山に登った外国人』(山本秀峰氏と共訳、露蘭堂)、ブリノフ『原子力砕氷船レーニン』(黒澤昭氏と共訳、成山堂書店)。
翻訳論文に、モロジャコフ「ロシアと日本――紛争の時代における協力1905-45」(『環』vol. 52、藤原書店、所収)。
論文「大竹博吉 略歴と資料」(『日露異色の群像30』に所収、東洋書店)。
なお、現在、『出版ニュース』誌に不定期にロシア書籍の紹介記事を執筆。


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