【書評】  「社(やしろ)をもたない神々」神崎宣武著  東京新聞2019年3月31日

【書評】
社(やしろ)をもたない神々 神崎宣武(かんざき・のりたけ)著
東京新聞2019年3月31日

https://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2019033102000176.html


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◆鏡餅をめがけて降りる歳神

[評]川村邦光(宗教・民俗学者)

 著者は現役の神主である。古神道の祭式を伝承してきた最後の世代だと言い、民俗研究を踏まえて、神々の世界、とりわけ社をもたない神々と人々の交流する世界を、淡々と、時には熱く語っている。

 まず正月から語り始める。正月にこそ、神々の古層が潜んでいることがわかる。神々の世界の根底になっているのは、歳神(としがみ)、歳徳神(としとくしん)、お正月様などと呼ばれる、正月に訪れる神である。大みそかの晩は歳神を迎えるために、どこにも出かけないで、お籠(こも)りをしなければならない。歳神は歳を授ける。それが「歳魂(としだま)」、つまりお年玉であり、餅によって表象される。玉は魂であり、餅を腹の中に入れることが、新しい魂を授与されて生命を更新することになる。

 この歳神は社に祀(まつ)られているわけではない。どこにいるのか。山のほうから、門松や鏡餅を目印、依代(よりしろ)にして降りてくる。すると、山の神か。山の神は田植えの頃に里に降りてきて、田の神になるとされる。山から水が流れ、田畑を潤し、飲み水にもなり、海へ注いでいくように、山の神は水の神や井戸の神、海の神ともなる。

 また、祖霊は山中に住むとされ、いずれも歳神と「同類」のカミである。そして、集落の境や峠にも神々が祀られる。山頂、山腹、山麓、開墾地へと神々のネットワークは張り巡らされていった。

 霊山、巨木、巨岩が信仰を集め、山の神や田の神、塞(さい)の神、道祖神(どうそじん)、産神(うぶがみ)、地神(じがみ)、産土神(うぶすながみ)などの神々が、時と場合に応じて、人々の要請もしくは祈願に応えている。自然の中にあって自由に往来する、社をもたない神々である。しかし、著者が「多くの伝統的な生活が激変した」と嘆息混じりに記すように、高度成長期以降、これらの神々は祀られることが少なくなり、忘れ去られようとしている。

 こうしたアニミズム(自然信仰)の世界を生み出してきた遠い先祖に思いを馳(は)せ、ゆったりとした時を大切にすることが今求められている、と著者は説く。本書は社のない神々への挽歌(ばんか)ではなく、警世の書として読み継がれよう。

(角川選書・1836円)

 1944年生まれ。民俗学者。著書『酒の日本文化』『江戸の旅文化』など。

「社をもたない神々」神崎 宣武著(KADOKAWA 1,836円税込)


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社をもたない神々 (角川選書)
KADOKAWA
2019-01-18
神崎 宣武

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神崎 宣武 KADOKAWAヤシロヲモタナイカミガミ カンザキ ノリタケ 発行年月:2019年01月


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<p>歳神・田の神・山の神・塞の神・地神・産神・産土神ーーご先祖様たちが広大な自然や日々の営みから見


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商品基本情報
発売日: 2019年01月18日
著者/編集: 神崎 宣武
出版社: KADOKAWA
発行形態: 全集・双書
ページ数: 248p
ISBNコード: 9784047036246

商品説明

【内容情報】(出版社より)
歳神・田の神・山の神・塞の神・地神・産神・産土神ーーご先祖様たちが広大な自然や日々の営みから見出し、崇め祀り、連綿と子孫に託してきたものとは何か。
「我われの民俗学は、先学の落とした落穂を拾うようなもの」。師・宮本常一の言葉に導かれるように、日本各地に残る原初の多様なカミたちの足跡を探索。代々続く吉備・宇佐八幡神社の神主として、半世紀にわたり古神道(民間神道)を実践してきた著者が、いま急速に失われつつある「日本のかたち」を伝え残す。

序章ーー自然に宿る神々の群れ
第一章 歳神と田の神
第二章 原初に神体山あり
第三章 神宿る樹木とその森
第四章 境を守る「塞の神」
第五章 地神・産神と産土神
終章ーーまじないと流行神

【内容情報】(「BOOK」データベースより)
歳神・田の神・山の神・塞の神・地神・産神ーご先祖さまたちが自然や日々の営みから見出し、崇め祀り、連綿と子孫に託してきたものとは何か。「我われの民俗学は、先学の落とした落穂を拾うようなもの」。師・宮本常一の言葉に導かれるように、各地に残る原初のカミたちの足跡を探索。代々続く宇佐八幡の神主として、半世紀にわたり古神道(民間神道)を実践してきた著者が、いま急速に失われつつある「日本のかたち」を伝え残す。

【目次】(「BOOK」データベースより)
序章 自然に宿る神々の群れ
第1章 歳神と田の神
第2章 原初に神体山あり
第3章 神宿る樹木とその森
第4章 境を守る「塞の神」
第5章 地神・産神と産土神
終章 まじないと流行神

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
神崎宣武(カンザキノリタケ)
1944年生まれ。民俗学者。旅の文化研究所所長。岡山県宇佐八幡神社宮司(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


◆もう1冊 

 谷川健一著『日本の神々』(岩波新書)。記紀以前のカミと人々の暮らしに迫る。

「日本の神々」(岩波新書)谷川健一著(岩波書店 885円税込)


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岩波新書 谷川健一 岩波書店ニホン ノ カミガミ タニガワ,ケンイチ 発行年月:1999年06月 ペ


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商品基本情報
発売日: 1999年06月
著者/編集: 谷川健一
レーベル: 岩波新書
出版社: 岩波書店
発行形態: 新書
ページ数: 225p
ISBNコード: 9784004306184
注記: 第8刷

商品説明

【内容情報】(「BOOK」データベースより)
かつて日本列島に住みなした人々は、風も樹も山もすべて「可畏きもの」をカミと考えた。すなわち災いをもたらすものも、稔りや大漁をもたらすものも、およそ人の力の及ぶべくもないすべての自然が畏怖の対象であったのだ。やがて天つ神に駆逐され、流竄の姿となっていくこれら神々の運命を辿りつつ、人々の暮らしの原像に迫る。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 神・祖霊・妖怪
第2章 外来魂と守護神
第3章 流竄の神々
第4章 創世神話の展開
第5章 生き神の思想と御霊信仰
第6章 神観念の拡大
第7章 神々を運ぶ海上の道
終章 回想の神々

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
谷川健一(タニガワケンイチ)
1921年熊本県に生まれる。東京大学文学部卒業。専攻は民俗学。現在、日本地名研究所所長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)









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